本作は、台湾のジャン・ジンシェン監督のデビュー作で、環境汚染と腐敗政治に翻弄される人々と、その闇に挑む法医学者と検事の姿を描いた社会派ミステリーです。社会問題という難しいテーマが盛り込まれつつも、ベースは不可解な事件を追う主人公の法医学者とその元妻である検事の姿が映し出されており、2人の関係性の行方も楽しめます。
脚本は、ジャン・ジンシェン監督とその妻であり脚本家のワン・リーウェンが共同で書き上げており、社会問題もテーマにしながらこれだけ緻密なミステリーを描くことができるなんて本当に素晴らしい才能の持ち主だと思います。男女それぞれの目線の描き方も秀逸で、夫婦だからこそ書けた物語なのかもしれません。
最初はある焼身自殺の遺体から青い発光物質が見つかるという不可解な事件に疑問だらけですが、後半にかけてどんどん伏線が回収されていく展開にスカッとします。ネタバレになるので詳細は控えますが、環境汚染や政治と企業の癒着という点については、日本でもあり得そうな内容なので、お国は違えど誰でも考えさせられるテーマなのではないでしょうか。
元夫婦の物語ですが、恋愛メインというよりミステリー要素が強めです。デートで観る場合は、事件の行方にハラハラする展開も多いので吊り橋効果も期待できそうです。元夫婦である法医学者と検事は、今は仕事上の付き合いだけをしているものの、お互いの性格を知っているからこそ相手に対する勘が働く場面もあります。そんな2人の関係性が事件とどう絡んでいくのかにも注目です。
環境問題や政治をテーマにした作品なので、中学生くらいになってから観たほうがより理解して観られると思います。ティーンは事件の推理をして楽しみつつ、人間ドラマや物語の背景にある社会問題にも注目してください。本作はフィクションですが、日本にもさまざまな社会問題があるので、これを機に調べてみるのもオススメです。
『High Flash 引火点』
2021年10⽉6⽇よりDVDレンタル、発売開始
株式会社ディメンション
公式サイト
©Across Films Inc.
TEXT by Shamy