『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督作ということで、期待を膨らませる映画ファンもいらっしゃることでしょう。シアマ監督が作り出す独特な世界観は本作にも通じていて、絵画のような美しい情景と、丁寧に描かれる心情描写が印象的な作品となっています。
本作の物語の舞台は、人気のない森。その森の中にぽつんと佇む家が、主人公ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)の祖母の家です。祖母を亡くしたばかりのネリーは両親とともに祖母の家の整理に訪れます。滞在期間中、ネリーが森を探検していると、1人の少女(ガブリエル・サンス)が現れます。ここからは映画で観ていただくとして、本作に登場する2人の少女は、ジョセフィーヌとガブリエルの双子の姉妹が演じています。2人が本当に可愛くて、時に彼女達の普段の仲の良さが滲み出ているシーンもあり、とても癒されます。2人は本作が映画初出演だそうですが、劇中劇の演技ですら演技力を感じさせていて、将来がとても楽しみです。
本作は娘と母、祖母の三世代に渡る物語です。三者の関係を丸ごと描いているというよりも、娘と母、母と祖母、孫と祖母、それぞれの関係性を日常の自然なやり取りで見事に表現しています。なぜ、2人の少女のストーリーになぞらえたのかというところは結末でじんわり伝わってきます。言葉で言い表せない、言い表せたとしても伝えきれない複雑な感情と、母の優しさ、子の優しさを、こういった形でみせるとはさすがセリーヌ・シアマ監督です。母という重圧を抱えて生きている世のお母さん、お母さんが大好きだからこそ心配が絶えない子ども達、両方に観て欲しい1作です。
物語の軸ではありませんが、夫婦という枠組みで観られる要素もあります。本作で起きる出来事に直面した時、大半の人はあたふたしてしまうと思います。でも、そっとしておく、相手を信じて待つという姿勢も大切だということを客観視できるでしょう。
小さいうちはおとぎ話を観るような感覚で観ると良いかもしれません。小学校高学年以上なら、ネリーと同じ目線で観られるので、素直に湧き出る感情を大切に観て欲しいと思います。中学生以上なら、いろいろなキャラクターの視点で観ることで、人間理解に繋がりそうです。
『秘密の森の、その向こう』
2022年9月23日より全国順次公開
ギャガ
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TEXT by Myson