歴史的に芸術作品と政治がいかに絡まり合っていたかを紐解くドキュメンタリー。正直なところ、もう少し知識を持って観れば、もっと理解が深まったはずと感じたので、皆さんにはせめて公式サイトでキーワードだけでもチェックしておくことをオススメします。もっと言うと、パンフレットに登場人物の紹介が載っているなら、鑑賞後に買うのではなく、観賞前に買って目を通してから観るほうが良いと思います。それにしても、世界的な芸術作品が政治や戦争の名の下に、ヒトラーやその部下、周囲の人達の個人的な欲によって奪われ、利用されていたとは悲しいですね。今でもなお、正当な持ち主のもとに返ることなく行方不明になっている作品が多くあるようで、子孫の代まで闘いを余儀なくされていますが、それだけ芸術作品に力があるということなんですよね。だからこそ、パブロ・ピカソが遺した「壁を飾るために描くのではない。絵は盾にも矛にもなる、戦うための手段だ」という言葉が胸に刺さります。皮肉にも、私のような美術、芸術に疎い人間は、こういった悲しい歴史を本作のような映画を通して知ることで、芸術作品の価値の高さに改めて気付かされるわけですが、権力、武力ではない“武器”だってあるのだということを、今平和な時代にいる私達はもっと自覚しなければいけないのだなとも感じます。
アートに興味のあるカップルなら、こういった視点の映画を観るのも、会話のネタが増えて良いのではないでしょうか。一方、そこまで美術にも歴史にもくわしくない人を誘うと、人物名や芸術作品の名前などが多数出てくるので、取り残されてしまう可能性があります。誘う人を選ぶ映画だという意味では、デート向きとは言えないかなと思います。
歴史の授業で習う範囲を越えて、もっとコアな内容に触れており、美術という観点から綴られているドキュメンタリーなので、歴史を知る入口として、こういうところから興味を広げていくのもアリだと思います。ただ、そもそも基本的な歴史的知識がないとついていけない内容なので、せめて中学生以上向けかなと思います。
『ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
2019年4月19日より全国順次公開
クロックワークス、アルバトロス・フィルム
公式サイト
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TEXT by Myson