子どもを守るために罪を犯した母と、罪を犯した母のせいで苦しみ生きてきた子ども達に、その呪縛から解かれる日はくるのか…。愛ゆえの罪だからこそ責められず、愛ゆえの罪だからこそ許せない、その両方の気持ちで葛藤する子どもの気持ちが、長男、次男、末娘、それぞれの立場で特徴的に描かれています。誰かのせいにしないとやりきれない子ども達の思い、子どものためにやったことなのに子どもから恨まれてしまう母の気持ち、どちらも悪くないだけに本当にやるせない。シチュエーションは違っても、こういう思いは誰もがしたことがあると思います。本作では、そんな親子それぞれの気持ちが爆発するシーンが印象的で、とてもエネルギッシュな描写が清々しくもあります。とっくに壊れている家族だけれど、やっぱり家族だからこそぶつかりあえて、家族の存在の大きさを感じさせられます。3人兄弟妹を演じる、鈴木亮平、佐藤健、松岡茉優の演技も見もの。脇役にも実力派が揃い、見応え抜群です。頑張って生きなければと思わせてくれるパワフルな作品です。
重いストーリーなので、初デートなど明るいムードを保ちたい時には向きません。ロマンチックな展開はありませんが、夫婦観を問うシーンがあり、鑑賞後にそれぞれの意見を話すと、相性が詳しくわかるかも知れません。そこで感覚が近いと、より深い絆が築けそうです。家族だからこその複雑な関係が描かれていて、家族で問題を抱えていたら、お互いの家族について話すきっかけにもできるでしょう。
冒頭から衝撃的な内容で、親が犯した罪によって子どもがずっと苦しむ様子が描かれています。PG-12なので、12歳未満でも大人と一緒なら観られますが、キャラクター設定も含め、ストーリー的にせめて中学生になってから観るのが良いと思います。家族の問題を解決するために、母親が犯した罪は、子どものためではありますが、結果的に子どもをずっと苦しめることになります。本作のようなシチュエーションにはならなくても、親が子どものために良かれと思ってやることは日常でいくつもあります。母目線、子ども目線の両方が描かれていて、お互いの思いを想像できる内容です。思春期の人は特に親子のコミュニケーションが取りづらい時期になっていると思いますが、客観的に親子関係というものを観るのに、本作は適していると思います。
『ひとよ』
2019年11月8日より全国公開
PG-12
日活
公式サイト
© 2019「ひとよ」製作委員会
TEXT by Myson