ロイ・アンダーソン監督が描く淡いパステル調の風景は、北欧独特の色調からくる部分もあるとは思いますが、それがとてもかわいくて、お人形達の世界を観ているような気持ちにさせられます。町も建物もインテリアも、そしてそこにいる人間もどこか愛らしさを感じさせますが、シーンの数々はとても絵画的でもあり、神様が模型の町で人形遊びをするように、人間世界を覗いているような感覚に観る者を誘います。それはまさに“神の目”を体感するような感覚です。公式サイトでは、監督自身、実際に、200年前、またはそれ以上昔の絵画から大きな影響を受けていると述べていて、監督がそれを映画として表現するにあたり、どんなことにこだわっているのかを知ると、作品への理解が一層深まります。ぜひ公式サイトの監督のコメントも合わせて読んでみてください。
そして、今回特に印象に残ったのはナレーションです。いろいろな人の人生の1シーンについて一言添えられていくのですが、ナレーションがあるシーンとないシーンがあるんですよね。それに気付いてから後半は何か法則が隠されているのか考えながら観ましたが、1度では読み解けませんでした(笑)。でも、ロイ・アンダーソン監督の作品はそういったところが魅力なのではと思うのです。いろいろな時代、いろいろな場面が出てきますが、時を越え、場所を越え、性別を越え、世代を越え、何もかも取っ払って広く広く見てみると、人間って同じようなことを繰り返して、苦しみ、喜びながら、生きているのだと気付かされます。ロイ・アンダーソン監督作品はいろいろと想像を膨らませながら観るのがおもしろいので、何度でも観て、自分なりの解釈が出てくる楽しさを味わってください。
好みは結構分かれそうな映画だと思います。なので、ある程度お互いの好みがわかった上で誘うならアリだと思いますが、初デートで観るには少々チャレンジングだなと思います。でも、観終わった後に「自分はこう思った」「私はこう解釈した」と意見を交換したくなるので、映画好きのカップルや議論好きのカップルにはオススメです。うまく解説できると、リスペクトも得られるかもしれないですね(笑)。
難しく考えてしまうとそのまま難しい映画に見えてしまう可能性もありますが、先入観なく子どもの目線で観ると、感覚的に楽しめる作品でもあるのではないでしょうか。派手な展開がないので、キッズは集中力が続かないように思いますが、中学生以上ならこういう作品を好きな人も出てくるのではと思います。美術的センスもくすぐられると思うので、芸術に興味がある人にも好んでもらえそうです。
『ホモ・サピエンスの涙』
2020年11月20日より全国順次公開
ビターズ・エンド
公式サイト
TEXT by Myson
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