本作は、シャイア・ラブーフが“トランスフォーマー”シリーズで一躍スターの仲間入りをした後、飲酒などのトラブルを起こし、リハビリ施設で治療の一環として書き上げたという自伝的脚本を映画化したものです。物語は、飲酒運転で事故を起こし、リハビリ施設で過去のトラウマと向き合うことになった22歳のオーティスが、子役をして家計を支え、問題を抱える父と2人で生活していた頃を思い出し、12歳の頃の自分、そして父と向き合うというもの。12歳の頃のオーティスをノア・ジュプ、22歳の頃のオーティスをルーカス・ヘッジズ、オーティスの父をシャイア・ラブーフが演じていますが、全員子役として活躍してきた経験を持っているというところで、彼らにしか出せない空気感、演技がそこにあるように感じます。3人の演技が本当に最高で、怒りと優しさ、憎しみと愛が入り混じる複雑な感情をリアルに体感できます。そして、この物語を書いたシャイア・ラブーフ自身が父を演じるということは、とても辛いことであったと思いますが、父と真っ正面から向き合うことになったことで、この物語のラストに辿り着いたのだと思うと、胸が熱くなります。一生懸命父の愛を求めるオーティスと、辛い過去を抱えたまま、子どもに養ってもらっているような状態を不甲斐なく思いながら、思わずオーティスに怒りをぶつけてしまう父。父と子の本当に切なくて辛い物語なのですが、同時に不器用な優しさに溢れていて、最後はとても温かい気持ちになれます。エンドロールでシャイア・ラブーフ親子の実際の写真も出てくるので最後まで席を立たないように。物語、役者、演出すべてにおいて最高の映画です。私が個人的にお気に入りの俳優が揃っているということでも猛プッシュしたい作品であり、ノア・ジュプがすっごく可愛いので、ぜひ癒されてください。
デートで観て気まずいシーンはありませんが、親子関係で悩んでいる、過去に苦しい思いをした人が観ると、一層感情が揺さぶられるストーリーなので、それぞれ1人の世界にどっぷり浸る感覚で観ることになるかも知れません。ムーディな雰囲気は期待できませんが、鑑賞後は自然に家族の話をしたくなると思うので、お互いをもっと知りたいカップルにオススメです。
父子の物語なので、老若男女誰が観ても感情移入できると思います。親子だからこそ言い出せないことがありますが、子どもの本音、大人の本音を客観的に観られるので、お互いに優しくなれるきっかけにできるかも知れません。友達同士で観るのもありですが、親子で観ると普段話せないことを話すきっかけにできそうです。
『ハニーボーイ』
2020年8月7日より全国順次公開
PG-12
ギャガ
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TEXT by Myson