本作は、インドの5つ星ホテルで実際に起きた無差別テロからの奇跡の脱出劇を映画化したものです。こういう紛争で多くの犠牲者が出る状況を観ると、宗教って何のためにあるんだろうとすごく考えさせられます。本作で容赦なく人を殺していくテロリスト達は一見恐ろしいですが、彼らはまだ若く、家族を守るためにテロ行為をさせられている側面が見えると、テロがいかに無意味なことかが伝わってきます。テロ事件を伝えるニュースからわかることも一部で、その報道によって犠牲者を増やすことになりうる状況なども窺えて、当事者でなくても、気を付けなければいけないことがあると気付かされます。そして、何より素晴らしいのがホテルマン達。命をかけてでもお客様を守るというプロ意識とプライドに敬服します。普通のサービス業でここまでの意識を持つって並大抵のことではないし、こういう精神が培われているからこそ、このホテルが5つ星なんだなと改めて感じます。包囲されて動けずに隠れているお客の中でも人種の違いで不和を招きそうになったり、逆にお国を問わず助け合う姿もあり、実際の社会が小さいコミュニティにも投影されている細かい描写も印象的です。個人的には、デヴ・パテルが演じたアルジュンのような人物の宗教観をもっと知りたいなと思いました。ニュースでは、国家間の問題もいろいろと取り上げられていますが、海外へ行った時、またその逆でもこういった状況は今後起こりうると考えると、他人事とは思えない内容です。
終始緊張感が張り詰める内容で、デートのムードが良くなるような内容ではありません。また実話をもとに映画化している点で、大きな犠牲が出ている点でも、1人でじっくり観るか、こういう問題に関心のある友達と観るほうが、集中して観られると思います。ただカップルで観るとしても、「こういう時、自分ならどうする?」と、人生観、価値観が出るような会話のきっかけにはなりそうです。
R-15なので15歳未満の人は観られません。思った以上に惨殺シーンが生々しく、本当に激しいので、それなりの衝撃はあります。ただ、国外ではこういう状況が実際にあり、宗教観の違いなどで、同じ民族の中でも殺し合いが起きることがあるし、先入観などから外国人を一方的に敵対視する人がいると知るのは大事なことだと思います。今日本でも海外から多くの人が来ていますが、違う国に生まれた者同士でうまく暮らしていくには何が必要なのか、何かヒントが見つかると思います。
『ホテル・ムンバイ』
2019年9月27日より全国公開
R-15+
ギャガ
公式サイト
© 2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION, ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC
TEXT by Myson