太宰治の「人間失格」から、こんなストーリーが生まれるなんて、その想像力と表現力に圧倒されます。原作のエッセンスが、どの部分に紐付くかは一見するだけでは解読が難しいほどに、良い意味で全然違う表現になっているので、「人間失格」の映像化作品でお腹いっぱいになっている人でも新鮮さを感じられるはずです。物語の舞台は、昭和111年、医療革命により死を克服し、環境に配慮しない経済活動と19時間労働政策の末、GDP世界1位、年金支給額1億円を実現した無病長寿大国、日本の東京。この設定からもわかる通り、今日本で叫ばれている社会問題を背景に、極端にシステム化されてしまった日本で、人間の生き方はどう変わっていくのかを想像させるストーリーとなっています。改めて「人間って何だろう?」と考えさせられ、「人間失格」という概念が、観ながら自然に頭に浮かび上がってきます。SFアクションアニメであると同時に、とても哲学的で、社会派な作品なので、いろいろな視点で鑑賞できると思います。
どんなスタンスで観るかによって、反応が違いそうです。哲学的に観るのが好きな人は、誘う相手がどういう観方を好みそうか考えてから誘ったほうが良いでしょう。頭を使って観る映画が苦手な人と観る場合、アニメやアクションの部分に響いてくれれば良いですが、「???」となる可能性も考えられるので、同じスタンスで観るのが好きな友達と観るか、1人でじっくり観るほうが楽しめそうな気がします。
太宰治の「人間失格」を知らずに観ても全く問題ありません。逆に本作から観て、太宰治の原作を読むとそれはそれでビックリするでしょう。想像力をすごく働かせて観るきっかけをくれるアニメなので、小学校高学年以上ならトライしてみてもよいのではないでしょうか。解釈が難しい部分もあると思いますが、今の段階では感覚的に理解できれば良いでしょう。また、誰かと一緒に観て、鑑賞後に語るとより内容を整理できて、テーマもわかってくると思うので、友達を誘うか、親子で観るのも良さそうです。
『HUMAN LOST 人間失格』
2019年11月29日より全国公開
東宝映像事業部
公式サイト
TEXT by Myson
©2019 HUMAN LOST Project