一攫千金を狙って、新ビジネスに懸ける男達のストーリーかと思いきや、お金や名声を築いた先にあるものをいろんな角度から描いています。ビジネス競争が一時期だけで終わるなら楽しめる人もいるのかも知れませんが、永遠に続く競争は、だんだん人を蝕んでいくし、自分がいるべきではない世界で戦うほど辛くて不毛なことはないなと実感させられます。これは実話なので説得力もあります。本作を観ていると、こういう資本主義社会に私達は生きていて、その流れに呑み込まれずに、自分の生き方は自分で考えて守らなければいけないんだなと、改めて客観視させられます。そして、意外なところで、宗教や信仰が人間にとってどんな価値を与えているのかまで描写している点も印象的。前半はスリリングなビジネス合戦、後半は人の本質をつくドラマで、すごく見応えがあります。ジェシー・アイゼンバーグのキレのある演技、ハゲ頭がインパクト大のアレクサンダー・スカルスガルドがこれまでにない役柄を演じている点も見どころですよ。
ロマンチックなシーンはほぼありませんが、ムーディな雰囲気だと逆に落ち着かないカップルにはオススメです。話そのものは難しくありませんが、株取引にまつわる技術革新が軸となったビジネス競争が繰り広げられるので、そういう話題になるとさっぱりわからないというタイプの人は誘わないのが無難です。
「こっちの取引だとこうで、あっちの取引ではああなって…」というような株取引と情報が各地に届くまでの時間差にまつわるビジネスのお話なので、キッズには難しいと思います。中学生以上なら理屈は理解できると思うので興味が湧いたら観てみてください。アイデア一つで新ビジネスを立ち上げるワクワクと、その後のいろいろなドラマチックな出来事の両方を観てこそ、この映画に込められたメッセージが読み取れるし、人生観としても1つのヒントになると思います。
『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』
2019年9月27日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
© 2018 Earthlings Productions Inc./Belga Productions
TEXT by Myson