ミア・ゴスがユニークな一人二役を務めた『X エックス』の前日譚となる本作は、『X エックス』のシリアルキラー、パールの若かりし頃を描いています。物語の舞台は1918年のテキサス。人里離れた農場で、厳格な母親、病気で介護が必要な父親と暮らすパールは、窮屈な日々を送りながらもダンサーになる夢を抱いています。そんなパールのもとにひょんなところからダンサーになる希望が舞い込んできます。
ここまで読むと、「あれ?ホラーじゃなくて、サクセスストーリーなの?」と思う方もいるでしょう。実際、序盤だけ観ているとホラーであることを忘れそうになります。でも、ふと「やっぱりか!」と思えるパールの狂気が垣間見えるシーンが徐々に出てきます。そして、パールに怖さを感じるのは、シリアルキラーである点だけではありません。女性として愛されることへの執着が半端ない!この一面が見えてくると、『X エックス』への伏線がはっきりしてきて、「これぞパール!」と思えます。また、ミア・ゴスの鬼気迫る演技が見ものです。カワイイのになんだか怖い、まだ何も起きていないのにもう怖いというムードを見事に表現しています。ちなみにミア・ゴスは本作に脚本、製作総指揮としても参加している点で、この役、このシリーズへの思い入れの強さを感じます。もう1点、注目すべきは、パールが惹かれる映写技師を、デヴィッド・コレンスウェットが演じている点です。彼はNetflixのドラマ『ハリウッド』の主人公を演じていて、クラシックな雰囲気と端正な顔立ちが物語の舞台となる時代のショービズ界を想起させるのにピッタリです。
本作の次に完結編として『MaXXXine(原題)』(2023年6月現在制作中)があり、『X エックス』から続く、A24初の三部作とされています。完結編への期待が高まる内容となっているので、ご期待ください。
殺人に至らないとしても、パールのような人は性別問わずどこにでもいると思います。本来は愛される要素も持っていながら、寂しさや不安で相手に依存的、支配的になる傾向にある方、もしくはそういう相手と交際中の方は反面教師として観るのはいかがでしょうか。ただし、一緒に観ると余計な不安を抱いてギクシャクする可能性もあるので、今の危機感の度合いによって1人で観るか、一緒に観るか検討してください。
残忍な行為をもろに映すことは意外に少ないながら、逆にその行動がどういう状況を生むのか頭の中で想像してしまうので、逆に生々しく感じて余計に怖いかもしれません。なので、少しホラーに免疫ができてから観ると良さそうです。『X エックス』の残虐シーンよりはマイルドだと思うので、『X エックス』に耐えられた15歳以上の方は観てみてください。
『Pearl パール』
2023年7月7日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
© 2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.
TEXT by Myson
関連作
『X エックス』
ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
Amazon Prime Videoで観る U-NEXTで観る Huluで観る