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PERFECT DAYS【レビュー】

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映画『PERFECT DAYS』役所広司/中野有紗

REVIEW

タイトルにある“パーフェクト・デイズ(完璧な日々)”ってどういう意味なのだろうと考えながら観ました。役所広司が演じる平山は、トイレ掃除の仕事をしていて、とても規則正しい日々を送っています。こうした計画した通りに過ごせた日の積み重ねを“パーフェクト・デイズ”と称しているようにも見えます。ただ、彼の日常は一見穏やかで同じような毎日に見えながら、些細なことでペースが乱されたり、同じ毎日ではありません。そんなほころびにこそ、苛立ち、悲しみ、喜び、安らぎがあり、むしろ掻き乱される日常にこそ人生の醍醐味があり、そんな日々を“パーフェクト・デイズ”と称しているのだと感じます。
平山を観て、幸せそうに思うのかどうかは観る方によってさまざまだと思います。ただ、彼の日常を観ていると、忙しい現代人は日々の大切な瞬間を見過ごしがちなことに気付かされます。世の中のものさしにおける“リア充”を求める人達は、今その瞬間にしかない本当のきらめきに気付かずにいるからこそ、どこか空虚なのかもしれません。
平山は止まり木みたいな人で、彼のもとにいけば、いつも優しく見守ってくれる存在のようです。良いとか悪いとか評価してこないし、ただ優しく包んでくれる。そんなキャラクターを役所広司が見事に演じています。
ストーリーにある余白も心地よく、その余白には包容力があります。その余白を感じることこそ、いつもは見過ごしている瞬間をこの映画で捕まえることのように感じます。また、劇中で表される木漏れ日の解釈に、なるほどと感じました。改めて一日いちにちを大切にしたいという気持ちにさせてくれる1作です。

デート向き映画判定

映画『PERFECT DAYS』役所広司/アオイヤマダ

ロマンチックなムードにさせてくれるようなストーリーではありませんが、朗らかな気持ちでリラックスできるでしょう。いつも忙しく過ごしているカップルなら、敢えて本作を観ることでゆったりした気分でデートをするきっかけにできるかもしれません。そして、本作はさりげなく自分の人生で何を大切にしたいのかを問うてくるので、お互いに感想を話すことで人生観が見えてくる部分もありそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『PERFECT DAYS』役所広司/柄本時生

皆さんと同じ世代のキャラクターも登場するので、彼女の目線で社会を眺めることができるでしょう。東京都内の各所にある、デザイン性豊かなトイレもたくさん登場します。ヴィム・ヴェンダース監督が描き出す芸術的な世界観も皆さんの創造力を引き出す良い刺激になるのではないでしょうか。

映画『PERFECT DAYS』役所広司

『PERFECT DAYS』
2023年12月22日より全国公開
ビターズ・エンド
公式サイト

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© 2023 MASTER MIND Ltd.

TEXT by Myson

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