REVIEW

ピーター・パン&ウェンディ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ピーター・パン&ウェンディ』アレクサンダー・モロニー/エヴァー・アンダーソン

ピーター・パンのお話は、ディズニーアニメーションを含め、何度も映像化されています。だから、意外にあらゆる“ピーター・パン”作品の原作のあらすじを知らないという方も多いのではないでしょうか。私もその1人です(汗)。そこでいろいろ調べてみたところ、“ピーター・パン”の原点は、1904年に初演された、ジェームス・マシュー・バリーの戯曲「ピーター・パンあるいは大人にならない少年」(題名の訳も微妙に異なるものが複数あります)とみて間違いなさそうです。そして、この戯曲を小説化した「ピーター・パンとウェンディ」が1911年に出版されました。本作は『ピーター・パン&ウェンディ』というタイトルからも、1911年の小説を原作としていると考えられます。原作のあらすじにも諸説ある(日本語訳も複数あるので、意訳の仕方によって余計にバリエーションが増えたとも考えられます)ので、原著を読んでみないことには正確に照らし合わせることは難しいですが、原作の内容にまつわる複数の情報を基にすると、本作は原作に忠実な部分と、ディズニーアニメーションの『ピーター・パン』(1953)の流れを組む部分が織り交ぜられていると見受けられます。
少し話は逸れますが、海外ドラマの『ワンス・アポン・ア・タイム』に登場するピーター・パンはどちらかというと悪役です。ディズニーアニメーションのピーター・パンに馴染みのある方にとっては意外に思えるかもしれませんが、原作ではピーター・パンには恐ろしい一面もあるという説が存在します。子ども達が大人になることを頑なに阻止しようとする場面で、ピーター・パンの暗い一面が出てくるようです。本作でも明るいスター的な存在としてばかり描かれているわけではなく、人が大人になることに否定的で、友達が大人になり自分のもとを去って行くことを恐れる姿が強調されています。ただ、本作のピーター・パンはウェンディ達との交流によって大切なことを学んでいき、怖いストーリーになっているわけではないのでご安心ください。クライマックスでは、ウェンディが大人になることをどう捉えるか語っており、その言葉は前向きでとても素敵です。機知に富んだその言葉は哲学的ともいえて、大人の心にも響きます。
本作でウェンディ役を演じているのは、ミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソン監督の実の娘、エヴァー・アンダーソン。両親の面影がすごくあって、ソックリだなと思いながら観つつ、堂々たる演技に感心します。途中アクションシーンもあり、ミラ・ジョヴォヴィッチの血筋を感じさせる身のこなしも見られますよ。身体の動かし方から体幹がしっかりしているのがわかります(笑)。そして、フック船長はジュード・ロウが演じていて、作品に重厚感が出ています。本作は、子どもも大人も楽しめる作品となっています。心の中に子どもの部分を持ち続ける大切さと共に、大人になることの意味を噛みしめることができますよ。

デート向き映画判定

観る方の年齢を問わないストーリーなので、デートでも気楽に観られます。大人が観ても楽しめるように作られていて、大人は大人で考えるところが出てくると思います。子ども心を忘れがちな方、子ども過ぎて大人になりきれない方と交際中の方は、やんわり気付いてもらう期待を込めて一緒に観てはどうでしょうか(笑い)。

キッズ&ティーン向き映画判定

友情の物語という点では、友達と観るのも良いですし、母と子の物語でもある点では、親子で観るのもオススメです。ディズニーアニメーションや他の映像化作品で“ピーター・パン”の物語を知っている方は、「ピーター・パンってそもそもどんな話なんだっけ?」と知りたくなると思います。これを機に図書館で小説を探して読んでみるのもおもしろいかもしれません。

映画『ピーター・パン&ウェンディ』ジュード・ロウ/アレクサンダー・モロニー/エヴァー・アンダーソン

『ピーター・パン&ウェンディ』
2023年4月28日よりディズニープラスにて配信開始
公式サイト

© 2023 Disney Enterprises, Inc.


関連作:アニメーション版

『ピーター・パン』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

映画『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー 『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー

今回は『白の花実』に出演する美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんにお話を伺いました。撮影前に準備されたことや、本編を観た感想を直撃!

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  2. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  4. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック
  5. 映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP