14歳の時に同級生が起こした銃乱射事件に巻き込まれ、重傷を負いながらも生還したセレステは、姉のエリーと犠牲者への追悼曲を作り、その曲が大ヒット。それがきっかけで彼女はスターへの階段を上っていきますが、本作はサクセスストーリーとしてではなく、1人の女性の悲劇として描いている点がとても印象的です。銃乱射事件の被害者というだけでも悲劇的なので、そんな彼女が幸せになっていくストーリーだと受け入れ易いようにも思いますが、そんな綺麗事で済まさない展開だからこそ、とてもリアルです。セレステの心がどこでどうすさんでしまったのかは、あらゆる原因が描かれていきますが、姉やマネージャー、多くのファンに囲まれながらも、孤独に苛まれている様子に、彼女が抱える影がくっきりと映し出されています。銃乱射事件の犠牲者としても、スターとしても、世の中から一定の観られ方をしてしまう時点で、とても窮屈な人生を強いられているセレステ。彼女の傲慢な態度は、一見スターの驕りに思えますが、身近なところで心配をしてくれる姉やマネージャーとはビジネス的な繋がりもあり、純粋な心の繋がりを見出しにくくなっているのかも知れないと考えると、見え方が変わってきます。このストーリーを観ていると、どんな話題でも世の中では単なるニュースとして“消化”され、その中心にいる人は、生身の人間というよりも、人形のように雑に扱われていると実感します。私達は、いろんなニュースを観て、どうしても解釈をしたくなりますが、偏った情報で解釈をした気になるこちら側こそ傲慢になっているのではと感じさせる作品です。
ロマンチックなムードにさせてくれるシーンは正直あまりありません。ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ、ステイシー・マーティンと実力派が共演している点で、映画好きカップルは興味を持つと思いますが、辛い経験を乗り越え、スターになった主人公の苦悩を描いていて、明るい雰囲気の映画ではないので、1人でじっくり観るか、映画好きな友達と一緒に観るのも良さそうです。
主人公セレステが14歳の時と、その17年後を描いていて、それぞれにティーンのキャラクターが登場します。年齢独特の感覚、例えば世の中の何に嫌悪感を頂いているか、逆に何が好きかというところは、ティーンの皆さんには普遍的に通じるものがあると思います。心の中に憤りや不安、いろいろな感情をグチャグチャにため込んだまま成長したセレステの心情も、もしかしたらティーンの皆さんのほうがピンとくるかも知れません。といいつつ、そこまで難しく考えなくても、感覚で観てもらえればと思います。
『ポップスター』
2020年6月5日より全国公開
ギャガ
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TEXT by Myson