ポルトガルの世界遺産シントラの町が舞台となっていて、自然に囲まれたのどかで美しい風景を見ているだけで行ってみたくなります。本作は、主人公フランキーの呼びかけによって集まった家族とその友人が織り成す群像劇ですが、皆が到着した朝からその日の夕方にかけての時間だけで、とてもドラマチックな人間模様が映し出されていきます。キャラクター達の会話から、フランキーは普段女優として活躍しているのがわかりますが、彼女は病を抱えていて余命わずかです。だからこそ、残される家族達を思い、最後の世話焼きなのか、いろいろな思いを胸に家族を集めます。彼女の思惑通りにいくかどうかは映画を観てのお楽しみですが、彼女が思っているほど物事は簡単ではないにしても、家族それぞれが今目の前にある問題に向き合っていく姿が、何だか優しさに包まれているような雰囲気に見えるのが不思議です。イザベル・ユペール、ブレンダン・グリーソン、マリサ・トメイ、ジェレミー・レニエ、グレッグ・キニアといった実力派が揃い、物語の大半は会話劇で構成されていますが、ラストにおいては言葉で語らず画で魅せるシーンになっていて、フランキーが辿ってきた道や家族の繋がりを象徴しているかのようでとても情緒的です。そして、何といってもフランキーを演じるイザベル・ユペールの演技と彼女が醸し出すムードがあってこその完成度の高さに圧倒されます。神秘的なムードに包まれた美しい情景とともに優雅に流れる時間を味わってください。
人生の終わりを迎えようとする女性とその家族、友人の物語で、主人公夫婦や、その子ども達も大人です。夫婦とは何ぞやという会話もいろいろ出てくるので、大人のカップルや夫婦で観るととても親近感が湧くと思います。夫婦の価値観、男女の価値観を見つめ直すきっかけになるので、普段話しづらいことも映画の感想を述べるなかで伝えてみてはどうでしょうか。
ティーンのキャラクターも登場するので、彼女の目線で観るのも良いですが、大人になってから観るほうがより感情移入しやすいとは思います。でも、心と言葉が裏腹なところを表情からうかがったり、抽象的な描写の中にある意味を見つけるのが好きな人には楽しめる作品だと思います。読書が好きな人、絵画が好きな人の好みにもハマりそうな気がします。興味があれば観てみてください。
『ポルトガル、夏の終わり』
2020年8月14日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト
© 2018 SBS PRODUCTIONS / O SOM E A FÚRIA © 2018 Photo Guy Frerrandis / SBS Productions
TEXT by Myson