マーティン・スコセッシ監督作『タクシードライバー』『レイジング・ブル』で脚本を担当したポール・シュレイダーが本作では監督と脚本を務め、マーティン・スコセッシは製作総指揮を務めています。主演にはオスカー・アイザックを迎え、復讐と贖罪の物語が描かれています。元上等兵のウィリアム(オスカー・アイザック)は、ある過去の罪に苦しみながらも、新たにギャンブラーとして出直そうとしています。そんな彼の前にある2人の男が現れ、彼の運命が動き出します。
劇中ではウィリアムがカジノでゲームをプレイする姿が映し出されているので、カジノに詳しい方だと彼のギャンブラーとしての腕も感じられるのかもしれません。もちろんカジノを知らなくても物語には問題なくついていけます。ウィリアムが淡々とゲームをプレイする様子からは、どことなく影を感じ、過去に何があったのかとても気になると思います。
オスカー・アイザックは、過去に苦しむウィリアムを見事に体現しており、その他にもキーパーソンとしてティファニー・ハディッシュ、タイ・シェリダン、ウィレム・デフォーが出演しています。特にタイ・シェリダンが演じたカークは、若者らしい危うさのある人物で、観ていてハラハラします。そんな彼がウィリアムとどう関わっていくのかにも注目です。
華やかなカジノを舞台にウィルアムを中心とした人間ドラマが静かに展開し、終盤になると一気に緊張感があふれ、目が離せなくなります。そんな緩急の作り方にはポール・シュレイダー監督の手腕が光っています。物語全体としてはギャンブラーとしてのすごさよりも、ウィリアムの生き様や、過去との向き合い方が印象に残る作品です。彼の過去に何があったのか予測しながら観ても良いですし、ご自身の過去を振り返りながら観るのもアリです。
相手がカジノに詳しい場合は、鑑賞後に劇中に登場したカジノのゲームについて解説してもらうとより楽しめるのではないでしょうか。また、本作にはウィリアムの恋愛模様も描かれています。ウィリアムはある女性と出会いますが、過去の罪への意識が強いため、恋愛感情に蓋をしているように見えます。彼とは状況が違ったとしても、本作を通してなかなか恋愛に踏み出さない相手を振り向かせるヒントが得られるかもしれません。
ある程度集中力が必要な作品なので、せめて中学生くらいになってから観てください。ティーンの場合は、それぞれのキャラクターを観察してどんな因果関係があるのか自分なりに考えてみてください。もしカジノに興味を持ったとしても、年齢制限があるので大人になってから行ってみてください。
『カード・カウンター』
2023年6月16日より全国順次公開
トランスフォーマー
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TEXT by Shamy