あらすじは読まずに観たほうが主人公ピーターの混乱に乗じることができると思います。ピーターは頭の中で聞こえる声にずっと悩まされながら、離れて暮らす娘を探します。ピーターの行動は終始不可解で、時に目を覆いたくなるようなシーンも出てきます。彼がなぜそんなことをするのかは徐々に明かされていきますが、彼が娘を探す間、同時にある事件が起き、「まさか、もしかして」と観る側はずっと胸騒ぎが止まりません。
本作はピーターが翻弄される状況や彼の周りにいる人の様子を淡々と映しているだけに見えて、カット割によってゾクゾクする不気味さが漂っているのも印象的です。主演のピーター・グリーンが見せる表情の細かな変化も見どころで、主人公が精神的に混乱を極めるなか、娘を思う父の優しさを醸し出すシーンが切なさを煽ります。1993年の作品ですが、やはり映画は時代を経ても色が褪せることはなく、時代を経て熟成されるように感じます。この独特な空気感を味わってみてください。
突然「ワ〜オ!」と目を塞ぎたくなる痛々しいシーンが出てきたり、終始陰鬱な空気が流れているので、デート向きとは言えません。ただ、日本では1996年にレイトショーのみで公開されただけでずっと観られなかった作品なので、映画通のカップルなら誘うと喜んでくれそうです。79分と上映時間は短いので、スケジュールは組みやすいですね。
一部、大人にとっても衝撃的なシーンが出てくるし、子どもがキーパーソンにもなっていて怖いと感じるところがあると思うので、大きくなってから観るほうが良いでしょう。ティーンの皆さんは、映画鑑賞に目覚めてきた方や、映画制作に興味が出てきた方に特にオススメです。この何とも言えない空気感は映画独特のものでもあると思うので、ぜひ体験してみてください。
『クリーン、シェーブン』
2021年8月27日より全国順次公開
PG-12
アンプラグド
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TEXT by Myson