本作は1996年に実際に起きた事件からインスピレーションを受けています。登場人物は22人のダンサー達。冒頭のシーンでまず「どうしたの?何があったの?」と思わせておいて、ガラッとテンションの違うシーンで緊張を解いたと思ったら、思わぬ方向に物語が進んでいくという構成に、観る者を引き込む技を感じます。ギャスパー・ノエ監督作品をあまり観たことがない人は純粋に物語が進行するのに合わせて狂気の世界に引き込まれる感覚を楽しめるでしょうし、監督作をよく観る人は逆に、ギャスパー・ノエ監督の作品にしては普通だなと前半思ってしまうかも知れませんが、期待通り後半にまさに”クライマックス”が用意されているので、ご心配なく。主演のソフィア・ブテラ以外は、演技経験のないプロダンサーが演じていて、冒頭と中盤に差し込まれているダンサー達のインタビューや会話はほとんどが即興だそうですが、ただダンスフロアの様子を映しているだけなのに、人間の本性が徐々に露わになり、相乗効果で皆がおかしくなっていく様がリアルで恐ろしいんです。登場人物達の”感覚”を視覚的に体感させるための独特なカメラワークも印象的で、さすがフツーの映画を撮らないギャスパー・ノエ監督だなと今作でも思いました。個性豊かなダンサー達の表現や身体能力も見どころで、濃厚な映画になっています。
ドラッグでトランス状態に陥ったダンサー達の本性が徐々に露わになり、混沌とした状況に陥っていく様を描いていて、もちろんエロ描写も露骨にあり、デート向きではありません。観終わった後も何を喋って良いか迷ってしまう可能性もあるので、1人で観るか、気を使わないで発言できる仲の良い友達と観ることをオススメします。
R-18なのでキッズやティーンの皆さんは、残念ながらほとんどの人が観られません。ポスタービジュアルには、ダンサー達がたくさん映っていて、ギャスパー・ノエ監督を知らないと、ダンスシーンが豊富な華やかな映画かなと思って観る人もいるかも知れませんが、R18が付いているだけあって、それなりの刺激はありますので、いろいろな映画を観慣れてから観るほうが良いと思います。
『CLIMAX クライマックス』
2019年11月1日より全国公開
R-18+
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
©2018 RECTANGLE PRODUCTIONS-WILD BUNCH-LES CINEMAS DE LA ZONE-ESKWAD-KNM-ARTE FRANCE CINEMA-ARTEMIS PRODUCTIONS
TEXT by Myson