9歳の甥っ子と叔父の数日間を描いた、マイク・ミルズ監督作。まず、モノクロがとてもしっくりきて、不思議な心地良さを感じます。鑑賞後に公式サイトで調べたところ、マイク・ミルズ監督が本作をモノクロにした意図が書かれていました。気になる方は本編を観終わってから読んでみてください。
本作はホアキン・フェニックスが演じる主人公のジョニーが、ある事がきっかけで心の距離ができていた妹の息子ジェシーを数日間預かることになり、ジェシーの目を通して、兄妹の関係や妹の苦労、自分について振り返るきっかけを得る様を描いています。素朴な日常が淡々と描かれていくなかに、それぞれのキャラクターの心の揺らぎが丁寧に映し出されていて、時にこわばることがありながらも、ゆっくり解きほぐされていく様子にホッコリします。また、9歳のジェシーはジョニーに容赦なく鋭い質問を投げかけることがあり、大人としてはハッとさせられます。さらにジェシーがいつも母の何気ない行動や仕草をよく見ていることが伝わってくるセリフも印象的で、子ども達は普段こんな風に大人達を観ていて、大人自身よりもよく理解していることに気付かされます。
そして、本作でもホアキン・フェニックスの演技力が光っていて、本当に何をやらせてもスゴいなと感動。ジェシー役のウディ・ノーマンはとても可愛くて、大人達の事情に翻弄される子どものリアルな心情を見事に表現しています。。叔父と甥っ子の物語ですが、子育てを違う角度から客観的に観られる部分も大いにあります。世のお母さん達に観て欲しいのはもちろん、子育てに参加しきれていないお父さんにこそ観て欲しい1作です。
きょうだいの物語であり、親子の物語であり、親戚の物語であり、広い意味での家族の物語というところで、近視眼的に見ていた事柄について俯瞰するきっかけをもらえるストーリーです。結婚生活や子どものいる生活をシミュレーションできる要素が多いので、将来を長く見据えた関係を築きたいカップルは一緒に観ると良いでしょう。
キッズの皆さんも9歳のジェシーの目線で共感できるポイントがあると思いますが、大人になってから観るほうがいろいろ味わい深く感じながら観られるように思います。ティーンの皆さんは、ジェシーが親に何かが起こっているということを何となくわかっていながらも大人達が何も教えてくれないもどかしさや、大人の事情で振り回されて戸惑う気持ちに共感できると思います。大人達の不器用さも垣間見えるのでそこにちょっと親近感を感じて、寛容になれるかもしれません。
『カモン カモン』
2022年4月22日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
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TEXT by Myson