くっついたり離れたりしながら、他の誰かと付き合っている時も、お互いが自分の一部になっていて、会っていなくてもずっと繋がっていて、魂で繋がる、運命で繋がる2人ってこういうことだと、理屈ではなく感覚に訴えてくる、情熱的なラブストーリーです。そして、本当に必要な時には物理的にも引き寄せ合う引力のスゴさに驚かされるのですが、本作の主人公ヴィクトルとズーラは、パヴェウ・パヴリコフスキ監督のご両親の名前がつけられていて、2人の複雑な愛から生まれたストーリーということで、なお驚きです。自分に置きかえると、こういう恋愛はいろんな意味で大変そうだなと思ってしまいますが、とてもロマンチックでドラマチックなので、すごく映画的と言えます。「それはありなのかい?」と思える展開もあるのですが、余計な説明をすっ飛ばして、グイグイ引き寄せ合う2人の情熱を凝縮した構成、演出になっている点でも、本能で惹かれ合う2人の世界をうまく象徴しているように思います。トマシュ・コットが演じるヴィクトルのダンディさと、ヨアンナ・クーリクが演じるズーラの妖艶さもモノクロに映えていて、とてもアーティスティックです。ストーリーを追うだけでなく、芸術として感性を研ぎ澄ませて観るべき映画だなと思います。
時代は1949年から1964年まで、土地はポーランド、ワルシャワ、東ベルリン、パリ、ユーゴスラビアを舞台にしており、社会に起こっている出来事からしても激動の時代なので、それだけで恋愛の障壁も多くあります。主人公のヴィクトルもズーラも壮絶な経験を経ながら、いつ2人一緒に安住できるのかわからないまま時を過ごしていきます。それでも2人は諦めないんだなと、強い絆を感じられるロマンチックで情熱的なストーリーなので、カップルで観ると良い刺激を与えてくれるでしょう。
ストーリーに起伏はあるのですが、やはりキッズやティーンの皆さんにとってはモノクロという点が少々ハードルになると思います。大人の恋愛を描いていて、歴史的社会的背景を理解できたほうがよりストーリーに入り込めるので、大学生くらいになってから観ると良いのではないでしょうか。
『COLD WAR あの歌、2つの心』
2019年6月28日より全国順次公開
キノフィルムズ
公式サイト
TEXT by Myson