フランス文学界を代表する女性作家シドニー=ガブリエル・コレットの半生を描いた本作。私はコレットという名前は聞いたことがありましたが、彼女の著書は読んだことがなく、本作でどういう人物だったのか知りました。女性として、妻として、作家としての苦悩が映し出されているわけですが、あからさまにフェミニズムを押しつけるような内容ではありません。情熱のある勇ましい性格でありつつ、彼女がいかに奥ゆかしい女性であったかが伝わってくるストーリーで、だからこそ女性目線だと、彼女の夫ウィリーに対して「こんちくしょう」と思ってしまう人もいるはず。そして、尽くしても尽くしても、どうしようもない男はどうしようもないけれど、それでも愛してしまう女の性(さが)って、万国共通、時代を問わずなんだなと切なくなります。何より自分が書いた小説を夫の作品として世に出され、自分の才能まで横取りされるなんて言語道断。他にも同じようなシチュエーションで苦しんだ女性の実話がいくつかありますが、やっぱり世界はずっと男性社会なんだなと実感しますね。とにもかくにも強い女性の多面性を丁寧に描いた作品なので、女性はもちろん、ぜひ男性にも観て欲しいです。
できる女性と、ダメな男という構図なので、男性は気まずく思うかも知れませんが、敢えて一緒に観て、お互いの価値観を話し合うのも良いと思います。男尊女卑だと意識していなくても、そこに悪意はなくても、気付かずに抱いている男性もいるはず。感想を言い合うだけで正せるとは思えませんが、お互いの心理を理解し合うという前向きな気持ちで会話すると、本作の鑑賞も有意義な共同作業になるのではないでしょうか。
PG-12ということもありますが、内容的に大人になってから観るほうが、よりリアルな感覚でキャラクター達の心情に寄り添えると思います。恋心が芽生えた人が本作を観ると複雑な気持ちになるかも知れませんが、男女関係にはこういうこともあるのだとちらっと知っているだけで、恋に盲目的にならず、自分のことも大事にする気持ちを保てるのではないでしょうか。
『コレット』
2019年5月17日より全国公開
PG-12
公式サイト
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TEXT by Myson