これはクリーチャーが登場する映画が好きな方にとってはワクワクしてたまらないドキュメンタリーです。“クリーチャー”と一言でいっても、こんなに制作の手法があるのだなとまず驚かされます。実在しない“クリーチャー”に息を吹き込むわけですから、それを具現化するのはアイデア勝負です。これまで想像力豊かな優秀なクリーチャー・デザイナーがいたことで、私達はリアルなクリーチャーを観られるのだなと改めて有り難みを感じます。
そして、特殊効果の分野にフォーカスしたドキュメンタリーであるだけに、映像技術の変遷そのものを観ることができる内容となっています。流行も移り変わっていくので、重宝されるクリエイターも変わり、流行の変化の煽りを受けて第一線から遠のいてしまう人達のコメントからは、生き残りがいかに厳しい世界なのかも伝わってきます。また、流れを大きく変える画期的な手法が使われた作品として紹介されるものは、興行的にも記録的なヒットを飛ばしているものが多く、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、サム・ライミなど、クリーチャー・デザイナーに無理難題を投げかける天才監督達のこだわりの強さも垣間見えます。
今は何でもCGで作れるものだと思われがちですが、一概にCGがあれば解決するわけではないこともわかります。いかに良い作品にするかというところで、クリエイター達はあらゆる手法を駆使して作品を作っています。劇中では、今は何をやっても観客は驚かないという嘆きもありましたが、本作で映画制作の裏側を知ると、きっと映画を観る姿勢が少し変わると思います。本作を機に多くの過去作も観たくなるので、ぜひ合わせて観てみてください。
クリーチャーが好きな方はもちろん、クリエイティブな仕事をしている方も共感できるポイントがたくさんあります。もっとこだわりたいけど予算がないとか、せっかく作ったのにボツになるとか、クリエイティブな仕事には付きものの“あるある”ネタも満載です。クリーチャーは出てきますが、芸術品として出てくるので怖いことも気持ち悪いこともあまりありません。2人とも興味があればデートで観るのもOKでしょう。
本作に登場するクリーチャー・デザイナーの皆さんは、子どもの頃からクリーチャーが大好きで、好きなことを仕事にしている方がほとんどのようです。「仕事だと思っていない」という方もいたり、子どもの頃の好奇心や自由な発想が大切とも語られていて、若い皆さんも今観ておくと良い刺激を得られるのではないでしょうか。“好き”を極めている方達のお話をぜひ聞いてみてください。
『クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』
2022年5月20日より全国公開
イオンエンターテイメント
公式サイト
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TEXT by Myson