1930年5月31日生まれのクリント・イーストウッドは、御年91歳(2022年1月現在)。90歳を超えても監督、俳優として第一線で活躍し続けているのは本当にスゴいですよね。そして、本作は監督デビューから50年、40作目となる記念すべき作品です。ストーリーは、ロデオ界のスターだったけれど落馬してから不毛な日々を過ごしていたマイク(クリント・イーストウッド)が、世話になっていた元雇い主から特別な依頼を受けるところから始まります。その依頼とは、メキシコへ行き、元雇い主の息子を彼の別れた妻の元から連れ戻すこと。メキシコに着いたマイクはさっそく息子の居場所を突き止めますが、これが一筋縄ではいきません。
どんなストーリーなのかは本編を観ていただくとして、一見男臭いムードが漂う本作には、ラブストーリーも重要な要素となっています。この辺りはクリント・イーストウッドとメリル・ストリープ共演の名作『マディソン郡の橋』のようなロマンチックな要素もあって、クリント・イーストウッド演じるマイクの色気が感じられます。そして、少年と心を通わせる物語というところでは、『グラン・トリノ』を彷彿とさせます。さらに本作のラストは長い人生を送ってきた人が辿り着く境地とは何ぞやというのを描いているようにも見えて、いろいろな意味でクリント・イーストウッド作品の集大成といえる作品となっています。でも、切なくて号泣するというようなテンションではなく意外にサバサバしている部分も多く、それが潔さにも感じられて逆にリアルです。世代によっていろいろな観方ができるので、老若男女に楽しんでもらえればと思います。
一定の距離を保ちながらジワジワと心を通わせていく大人の恋愛が描かれていて、老年のカップルは等身大で楽しめそうです。若い世代でも恋愛に臆病になっていてなかなか恋愛関係に踏み込めないでいる友達以上恋人未満の2人なら共感できるところもあるでしょう。気まずいシーンはないので初デートでも大丈夫です。
過激な作品というわけではありませんが、感情移入して観られるとしたら中学生以上かなと思います。ティーンの皆さんは、主人公のマイクと逃亡の旅に出る少年ラフォの目線で観られるでしょう。ラフォは両親が別れたことで母親とメキシコに住んでいますが、母親との間に問題を抱え、ストリートで生きています。また、父親のことをあまり知らないというところで、期待と不安を膨らませる様子も描かれていて、親子関係も物語の重要な鍵となっています。皆さんがラフォと同じような状況でなくても、大人に対する警戒心や期待など共感できるところがあると思います。大人のずるい面を目の当たりにするシーンもありますが、自分ならどうするか考えながら観ると、自身の価値観が少し見えてくるかもしれません。
『クライ・マッチョ』
2022年1月14日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
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TEXT by Myson