この映画を日本で作るとはちょっと意外に感じましたが、一方でオリジナルがすごくおもしろくて個性的なので、もっと早く日本版があってもおかしくなかったとも思えます。オリジナルは、1997年に公開されたヴィンチェンゾ・ナタリ監督作『CUBE』。立方体の部屋の中だけで繰り広げられるストーリーは当時とても新鮮で、そのユニークさに魅了されたのを覚えています。
ネタバレしてしまうのであまり具体的に書けませんが、一見淡々としていて地味なシチュエーションなのですが、ギョエっとする展開が要所要所にあってすごくメリハリがあり、無機質な世界観だからこその不気味さが魅力です。この日本版には、ヴィンチェンゾ・ナタリがクリエイティブ・アドバイザーとして入っているので、お墨付きといえるでしょう。日本人が撮ったらどうなるのか、日本の人気俳優が演じるとどう見えるのか、日本版は日本版で新たな気持ちで楽しんでいただけたらと思います。
菅田将暉、岡田将生、斎藤工、吉田鋼太郎、杏が出演していますが、その配役の意図や効果も物語が進行していくほどに見えてきます。私はヴィンチェンゾ・ナタリ版の『CUBE』を観たのは劇場公開当時でインパクトはいまだにありつつ細かいところは忘れていたので、日本版を観て徐々に記憶が蘇りました。私と同じような状況の方は、まずは日本版を観て、改めてオリジナル版も観て比較するのもおもしろそうです。
ビジュアル的にショッキングなシーンも出てくるので、相手の好みや許容範囲がわからないうちはデートで観るのは控えたほうが良さそうです。ある程度、相手の好みや許容範囲がわかっているならば一緒に観ようと誘うのもありでしょう。ロマンチックな展開はありませんが、ハラハラドキドキするので、少し吊り橋効果もあるかもしれません。
本作には子どもも登場します。他は全員見知らぬ大人という状況で彼がどんな風に振る舞うのか、皆さんは彼の目線で観られると思います。わかりやすいストーリーでゲーム感覚も楽しめるので若い方にもオススメの作品ですが、怖いシーンも出てくるので免疫がまだついていない方は少々覚悟して観てください。
『CUBE 一度入ったら、最後』
2021年10月22日より全国公開
松竹
公式サイト
©2021「CUBE」製作委員会
TEXT by Myson