女性解放運動の先駆者、グロリア・スタイネムの実話を基に描かれた本作は、グロリアの幼少期から晩年を通して、ユニークな演出で振り返る内容となっています。彼女のアイデンティティは、両親の価値観や生き方から受け継いでいると思われるところが多々あり、父親、母親の背景もとても印象深く綴られています。少し変わった家庭にも見えるし、グロリア自身が苦労するところもありますが、父親も母親もそれぞれの愛し方、励まし方でグロリアを支えている姿にグッとくるものがあります。
また、女性蔑視が今よりもっと根深かった時代に、セクハラやパワハラに負けず、ジャーナリストとしての地位を確立していく姿はとても勇敢でカッコ良いです。そして、そんな世の中に対するグロリアの抵抗が徐々に個人的なものから社会的なものに発展していく背景には、他にもグロリアのように社会に立ち向かう女性達がいて、観ているこちらも励まされるところがあります。さらに、同じ女性として女性解放運動を共にしていても、性差別以外に人種の問題なども絡んできます。本作は、女性解放運動家の美談だけを映しているわけではなく、その先にまだある根深い問題もしっかり描いている点でとても好感が持てます。
女性がどんな歴史を歩んできたのかを知ることができる作品であるのはもちろん、私は個人的に、両親とのストーリー、彼女の仕事に対する姿勢やポリシー、そしてそこからブレない強さ…、あらゆる面で心に刺さりまくりました。「私達は好きなように生きて良いんだ」と、とても勇気づけられる内容です。多様性に目を向けられてきたこの時代に、性別も人種も年齢も問わず多くの方に観て欲しい1作です。
女性が共感するのはもちろんですが、性別を問わず気付かされることが多くあると思います。性差別はテーマの1つではありますが、それだけを描いている作品ではないので、自分の心を解放する気分で観て欲しいと思います。夢を追う方や自分が望む仕事に就いている方にも共感ポイントが多いので、それぞれの夢や仕事への情熱を語りあう機会にもできそうです。
人前で話すことが苦手なグロリアが、インタビューやスピーチ時にかけられる心ない言葉にどう切り返しているかという点や、社会的に強い立場にいる人から圧力をかけられた時にどう考えるかなど、考え方や生き方がとてもカッコ良くて、勉強になる部分が多くあります。これは社会人に限らず、学校生活を送る皆さんにも通じるところがあると思います。女性解放運動については、中学生くらいになってから観るほうが社会的、歴史的背景をわかった上で観られると思いますが、若い皆さんにもぜひ観て欲しいです。
『グロリアス 世界を動かした女たち』
2022年5月13日より全国順次公開
キノシネマ
公式サイト
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TEXT by Myson