太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」を、ケラリーノ・サンドロヴィッチが2015年に舞台化し評判になった作品を、成島出監督が映画化したのが本作です。本作の要となるキャラクター、キヌ子は舞台でも映画でも小池栄子が演じています。情報を何も入れずに観るようにしているので、観賞中に「舞台演劇っぽい空気感だな」と思っていたのですが、ルーツを知って納得です。少々オーバーアクションに感じるシーンがあったのですが、そういった部分も含めて、舞台演劇的なムードを継承しているように思います。小池栄子が演じるキヌ子はかなり灰汁の強いキャラクターですが、とても多面的なので演じるのが難しい役柄だと思います。そこを舞台でも映画でも演じきったという点で、小池栄子の演技力にまずご注目ください。そして、優柔不断で気弱なのになぜかモテる田島を演じるのは大泉洋。彼もまた、“不思議とモテる男”の絶妙な雰囲気を体現しています。また水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江が田島を取り巻く女性達を演じていて、レトロな世界観に映える美女達も堪能できますよ。
二股どころか何股もかけている田島が、関係を整理するためにある手段を使うというコメディなのですが、片方が本当に影でこういう状況を抱えている場合は、落ちついて観られないストーリーです(笑)。また、過去に股をかけられたという経験がある人は、今の関係がそうでなくても過去の余計なことを思い出して悶々とする可能性があります。ただ、最後まで観ると、とてもロマンチックなラブストーリーなので、大半のカップルはデートで観てもオーケーでしょう (笑)。
キッズやティーンの皆さんは、ここで描かれているような大人のややこしい関係を逆に気楽に笑って観られるかも知れません。キヌ子のキャラクターが相当濃いので、真似しちゃいたくなる人も出てきそうです(笑)。映画のターゲットとしては年齢層高め大人のようですが、興味があれば観に行ってみても良いのではないでしょうか。
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』
2020年2月14日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト
©2019『グッドバイ』フィルムパートナーズ
TEXT by Myson