最近のジョニー・デップの出演作はファミリー向けやファンタジー大作が目立っていましたが、こういう“普通の人”を演じる彼を観るのが久々な気もして、とても新鮮であり、ジョニー・デップの俳優としての力量を改めて感じます。まあ普通の人と言っても、ある意味普通ではなくなっているのですが(笑)、年齢を重ねてもなおセクシーで、同時に少年ぽさもあり、彼の魅力が存分に活かされたキャラクターとなっています。そして、主人公が余命を意識し最期を精一杯過ごそうとすることで、ほころびだらけの人生がどんどん修復されていくストーリーがとても温かく、主人公が周囲の人に伝えるメッセージも直球で心を動かされます。一方で、主人公の破天荒な行動はユーモアに描かれていて、しんみりするばかりではなく、豪快さと滑稽さがある点で、人生何でもありだなと気楽さを与えてくれます。また、主人公は英文学の教授ということで、授業で語るセリフが哲学的で深いので、それを聞いているだけでも得した気分になれます。『いまを生きる』の破天荒先生バージョンといった感じで、名作と言えると思います。
コミカルに描かれているので、思ったほど気まずくならない気もしますが、セクシャルなシーンがいくつかあるので、ウブな人同士のデートでは、ちょっと恥ずかしくなる可能性はありそうです。夫婦関係も物語の重要な部分になっていて、長年連れ添った夫婦や、ベテランカップルには、響くところがあるでしょう。初デート向けとは言えませんが、惰性で付き合っているような感覚のカップルは、新たな風を感じて、やり直す気持ちになれるかも知れません。
R-15なので15歳未満の人は観られませんが、そもそも内容からしても、大人になってから観るほうが感情移入できると思います。でも、これからの人生を無駄にしないために、本作を観られる年齢のティーンの皆さんは、主人公のメッセージを聞いて、今後どうするべきかを考えられたらラッキーです。劇中で授業のシーンがあり、いろいろな学生が出てきますが、自分はどっちの側に入りたいか考えながら観ると、これからの勉強へのモチベーションも変わるのではないでしょうか。
『グッバイ、リチャード!』
2020年8月21日より全国公開
R-15+
キノフィルムズ
公式サイト
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TEXT by Myson