親の願う人生を子どもが背負うとはどういうことかというテーマを、すごくわかりやすい喩えで描いています。親が子に何かを願うのは必ずしも悪いことではなく、本作の設定も母の大きな愛ゆえのことなので、親を責めるという内容ではありませんが、だからといって、子どもは子どもでそれを背負い切れなくて苦しむこともあるんだということを、究極の設定を用いることによって、観る者に伝わりやすくしています。主人公が五億円を稼ぐために、いろいろなアルバイトをするという設定もユニークで、本当にあるのかどうかは定かではないですが、本当にその世界に入り込んだらヤバそうな危険なアルバイトもいくつか出てきます。そういったスリリングな展開もありながら、主人公の持ち前の性格でピンチをすり抜けていく姿にどこか癒される部分があり、世の中にある善と悪を両方描きながら、伝えたいメッセージをうまく盛り込んでいます。主演の望月歩さんにはインタビューでお会いしましたが、彼自身もすごく朗らかで役にピッタリでした。
五億円稼いでから死のうとしている主人公。それはどういう意味なのか、ぜひ映画を観て確かめてください。
ロマンチックなストーリーではなく、特別デート向きとは言えませんが、何かしら親や周囲の意向を無視できない状況で生きてきた人にとっては、とても共感できる内容なので、そういった事情を抱えている場合は、本作を観ると話したくなるかも知れません。なので、交際相手がそういう事情を抱えて1人で悩んでいそう場合は、それとなく誘ってみても良いでしょう。でも、無理矢理話をさせずに、相手の反応に任せるのが良いと思います。
親に心配されまくって、うっとうしいと思ってしまう思春期の皆さんは、本作を観ると、いろいろなことが客観視できると思います。決して、皆さんに説教をするような内容ではなく、共感できる部分が多いので、素直に周囲の人の思いを想像できるはずです。世の中には善い人も悪い人もいますが、その影響をどう受けるかは、自分次第かも知れません。そんなことも考えながら観ると、自分はどんな人間になりたいか、少し具体的にイメージできると思います。
『五億円のじんせい』
2019年7月20日より全国公開
NEW CINEMA PROJECT
公式サイト
©2019 『五億円のじんせい』NEW CINEMA PROJECT
TEXT by Myson