夫と別れたエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)と、10代の娘ジュディット(メーガン・ノータム)と息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)、ひょんなことから彼等の家で間借りすることになったタルラ(ノエ・アビタ)の物語。エリザベートは長らく専業主婦だったにもかかわらず、いきなり2人の子どもを養うため働くことになります。自分に自信をなくし絶望感に苛まれているエリザベートが、しばしば涙を見せるシーンがまず印象的で、彼女のか弱さが滲み出ています。ただ、そんな姿を見せながらも、新しい職を見つけようと行動を起こす姿から、彼女は芯が強いことがわかります。また、ただでさえ経済的余裕がないにもかかわらず、路頭に迷うタルラを家に招き、時には厳しい態度を見せるシーンは、彼女の母性の強さと優しさ、器の大きさを感じさせ、共感を呼びます。もう1人のキーマン、タルラもパリという街の多面性を映す鏡のような存在として描かれています。そして、エリザベートの子ども、ジュデイット、マチアスが母を心配しながら少しずつ大人になっていく姿も優しく映ります。
シャルロット・ゲンズブールをはじめとしてキャストが皆好演していて、哀愁漂うストーリーながら、同時に優しさも醸し出され心地よい空気に癒されます。脇役で登場するエマニュエル・べアールの存在感と貫禄にも要注目。絶望感や孤独感、無力感に押し潰されそうな時に観て欲しい1作です。
人生の辛い時期にあるキャラクター達が再生していく物語なので、デートで観るのもアリですが、何となく付き合っているような状態でまだ正式に交際するかわからない間柄の2人にとっては、気まずくなる展開があるかもしれません。安定した関係ならデートで観る、まだ落ち着かない方は1人でじっくり観るのがオススメです。
10代のキャラクターも複数出てくるので、ティーンの皆さんは等身大で感情移入できると思います。友達のこと、気になる子のこと、家族のこと…、いろいろな切口で観られるので、自分の気持ちに向き合うきっかけとなる部分もあるでしょう。セクシャルなシーンも出てくるので、一緒に観る相手は選んだほうが良いと思います。
『午前4時にパリの夜は明ける』
2023年4月21日より全国順次公開
R-15+
ビターズ・エンド
公式サイト
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TEXT by Myson