PlayStationの“グランツーリスモ”というゲームは知っていたものの、こんなプロジェクトが実際に実行されていたなんて、本作で知りました。車メーカーの日産自動車は、自社商品のプロモーションとして驚くべき企画を立ち上げます。それは、全世界販売数累計9000万本(2022年11月16日現在)を誇り、世界的に人気のドライビングゲーム“グランツーリスモ”の優秀なゲーマーを、現実の世界で日産のカーレーサーにすること。いくらリアルに作られたドライビングゲームとはいえ、本物のカーレーサーになるなんて無茶だという周囲の懐疑的な反応もありながら、企画者のダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)は、いくつかの条件を付けられながらも“GTアカデミー”の発足を許されます。そして、トレーナーとしてジャック・ソルター(デヴィッド・ハーバー)をメンバーに迎え、世界でトップの“グランツーリスモ”プレイヤーを集めて、過酷なトレーニングを課していきます。
ドライビングゲーム“グランツーリスモ”が誕生したのは、なんと1997年というから、その歴史の長さに驚かされます。そして、劇中ではこのゲームがいかに現実に近く、精巧に作られているかが強調されており、ゲームのクオリティの高さがそのままゲーマーのドライビングテクニックの高さを証明しています。とはいえ、やはり実際のカーレースではG(重力)がかかるし、ミスがそのまま自分やライバルの命の危険に繋がる可能性があるという点で、現実の世界でカーレーサーになる壁の高さを感じさせます。これはかなり無謀な取り組みであるからこそ、夢のような話をいかに信じられるかが鍵となっていて、ダニーとジャックという挑戦者達を信じる人がいたこと、周りからの冷ややかな目に負けずに夢を追う挑戦者がいたこと自体が最初の奇跡といえます。
彼等にどんな道のりが待っているのかは映画で観ていただくとして、最初から最後までミラクルの連続であり、ワクワクが止まりません。これこそ、奇跡が起こるための必然なのだろうなと思えて、観ていてすごく夢と勇気をもらえます。そして、この映画そのものも、“グランツーリスモ”の生みの親である山内一典氏、“GTアカデミー”の考案者ダレン・コックス氏、主人公のモデルとなったカーレーサー、ヤン・マーデンボロー氏が参加して作られたのも感慨深いですね。夢と情熱がいっぱい詰まった本作は、夢を持つ方には誰にでも響くはずです。
ほどよくロマンチックな展開もありながら、軸はカーレーサーを目指す青年と、その夢の実現を支える仕事人達のドラマなので、観る方を選びません。なので、初デートでも気兼ねなく観られるでしょう。カーアクションの迫力も満点で、テンポよくストーリーも進行していくので、2時間越えの上映時間もあっという間です。カーレースに興味を持ったら、国内では鈴鹿サーキットなどカーレースを観るデートを計画してみても良さそうです。
ゲームのことを全く知らなくても、物語についていけます。カーレースのシーンそのものにスピード感があるし、登場人物に起きる出来事もドラマチックなので観ていて飽きません。小学校高学年以上なら集中力は問題なく保てると思います。そして何といっても、夢のあるストーリーという点で、若い皆さんが観ると将来に希望が持てると思います。周囲が何といおうとやりたいことがある方は、諦めない気持ち、どこに奇跡があるかわからないと信じる気持ちをおすそ分けしてもらえるでしょう。
『グランツーリスモ』
2023年9月15日より全国公開
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト
TEXT by Myson
本ページの情報は2023年8月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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