実話をもとにしたフィクションということで、一部は実際の出来事とは異なる部分があるとはいえ、主人公が母親から受けた仕打ちは本当に辛いもので、よくこの状況でまっとうに成長したなと信じられません。でも、本作の魅力は虐待されて苦労した主人公の物語だけで終わらず、そんな母でもずっと愛し続けた主人公が母を理解しようとして努力し、母の気持ちも観る側が想像できるように描かれているところです。親子だからこそお互いに譲らないところもあるし、人を変えるというのは本当に難しいですが、それを諦めずに突き進んでいく主人公の強さと明るさ、包容力に希望と勇気をもらえます。また同時にやっぱり周囲の支えがいかに必要だということにも気付かせられるストーリーで、辛い内容ながら人の温かさに救われる作品になっています。そして、自己肯定感の重要性も実感。主人公が幼い頃から唯一頼れる“ばあちゃん”が、成長した主人公に投げかける言葉はとても印象的で胸を打ちます。主演の太賀、母親役の吉田羊、主人公の友人役の森崎ウィンの演技も見事で、母親視点、子ども視点、周囲の視点、どの視点からもいろいろと考えさせられる作品です。
実話がベースで深くて重い内容なので、デートで観るムードには合わないと思いますが、こういう作品を一緒に観るという経験を共有することはカップルにとって有意義だと思います。自然に家族の話をしたくなると思うので、本作をきっかけにお互いのことをもっと知ることができるかも。逆に話したくないという雰囲気になったら、無理に聞きだそうとせずに、困った時に支えられる気持ちを持てれば良いと思います。
大好きなお母さんから虐待を受けてきた主人公のストーリーなので、年齢を問わず誰が観ても辛い内容ではあります。虐待かどうかはわからなくても、家族から冷たくされている人なら、他人事として観られないくらい辛いと思います。辛い思いをしている本人に、大人の事情、虐待をする人の事情をわかって欲しいというのではなく、まずは周囲の人間が知っておくべき事実であり、どうやって支えるべきかを考えるきっかけに観て欲しいと思います。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
2019年4月24日よりDVD発売、レンタル開始、4月10日デジタル配信開始
KADOKAWA
公式サイト
©2018 「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
TEXT by Myson