主人公は、仕事は順調、交際3年目になる恋人とも仲良く暮らしている佐田紀夫(前原滉)。序盤はそんな紀夫と彼女とのラブラブなシーンが印象的に描かれているので、観る側もその後の展開に主人公同様「???」となります。「あれ、この作品ってSFだったっけ?」などいろいろな想像が頭を巡りますが、そのまま物語はどんどん進行していきます。なので、観る側は自ずと謎を解き明かそうといろいろと考えてしまうのですが、最後の最後まで観て、「あ!」と何かに気付くと思います。その答えに結びつくお話は山西竜矢監督のインタビューのほうで語られていますので、1度真っ新な状態で観てから、ぜひインタビューも読んでいただければと思います。
この作品は独特の空気感があって、物語が大きく展開するところで、主人公の周りに流れている空気と、世の中の空気が違ったように見えるところも魅力的です。一種のファンタジーのように見えて、実は誰にとっても身近なもの、身近だけど見ないふりをしているところが暴かれていて、良い意味でのゾワッとした感覚が味わえます。恋愛に理想を持っている方、恋愛に疲れた方、それぞれいろいろな感想が出てきそうな作品なので、観終わった後に語れる方を誘って観ると良いですよ。
カップルで観ると気まずくなる可能性があるので(笑)、仲の良い友達と観るか、1人で観ることをオススメします。ただ、ある程度恋愛経験もしてきたという大人の方は割り切って観られるでしょうし、実際にお互いこれまでの恋愛を振り返って「言われてみればそうだ」という感覚で、観終わった後に楽しく会話できる余裕があるかもしれません。
多くを語らない作品なので、キッズの皆さんはちょっと難しく感じそうです。ティーンの皆さんは充分に理解できると思いますが、皆さんはきっとまだ恋愛に理想を持っていますよね?なので、今はもう少し恋愛に理想を持ち続けて、何度か恋愛を経験した後に本作を観たほうが、「そういうもんなんだな」とすんなり受け入れられるでしょう。一方で、恋愛とは何ぞやということにも興味があると思うので、そういう方は本作を観ると、参考になる部分があると思います。
『彼女来来』
2021年6月18日より全国公開
SPOTTED PRODUCTIONS
公式サイト
©「彼女来来」製作委員会
TEXT by Myson