1970年のロンドンで、女性解放運動の活動家達が“ミス・ワールド”開催に対して抗議運動を起こしました。本作はその背景を描いた実話です。本作を観るとわかるとおり、当時の女性は男性の飾りか目の保養のために存在しているような扱いを受けていて、当時の“ミス・ワールド”も見た目だけで評価されるような状況でした。そこで活動家のサリー(キーラ・ナイトレイ)達は、女性解放運動の一つとして、開催を間近に控えた“ミス・ワールド”への抗議を行うことにしたのです。でも、サリー達は出場者の女性達を非難しようとしたわけではありません。本作を観る上でも、ここは誤解がないように観て欲しいポイントです。
“ミス・ワールドといっても、いろいろな事情を背負って出場している人達がいて、性差別だけを問題視するに留まらない複雑さを持っていることもわかります。本作では人種差別の問題も描かれていて、クライマックスのサリーとジェニファー・ホステン(ググ・バサ=ロー)のシーンは、“ミス・ワールド”が持つ複雑さにおける核心をついています。ジェニファーの口から放たれる言葉は、“見た目”にずっと苦しめられてきた人々の言葉を代弁していて、ハッとさせられます。さらに本作で印象的だったのは、サリーと母(フィリス・ローガン)のシーン。世代の違う女性がそれぞれに性差別のある社会をどう生きてきたかを物語っていて、胸が締め付けられる部分もありつつ、母として生きる女性の強さと愛を映し出しています。
いまだに世界中で性差別はあり、現代の私達にも通じる物語です。女性に観ていただきたいのはもちろん、性別や年齢を問わず観て、この社会について考えるきっかけにして欲しいです。
サリーをそっと支えるパートナーが素晴らしいです。自分はあまり尊重してもらっていないなと感じている方は、お手本の一例としてパートナーに見せてはどうでしょうか。自分が性差別的な言動をしているかどうか無頓着な人もいるので、パートナーの普段の言動が心配な方も一緒に観て、具体的な注意ポイントなどを忠告する機会にするのもアリかもしれません。
今はミスコンだけでなくミスターコンもあります。華やかなイメージもあるので、若い世代からすると、主人公達がなぜミスコンに抗議するのかピンとこないかもしれません。だからこそ、背景にどんなことがあるのか知るために本作を観て欲しいです。主人公達は当時の“ミス・ワールド”のどの部分を批判していたのかをよく考えることで、性差別の背景にいろいろな問題も絡んでいるのだと知ることができます。
『彼女たちの革命前夜』
2022年6月24日より全国順次公開
キノシネマ
公式サイト
© Pathé Productions Limited, British Broadcasting Corporation and The British Film Institute 2019
TEXT by Myson
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