アフガニスタンに赴任していた米軍の兵士達が、現場の状況を偽装して民間人を殺害していた実話を映画化。監督は、ドキュメンタリー作家として2度アカデミー賞にノミネートされたダン・クラウスが務め、2010年に起きたこの事件を題材に手がけた自身のドキュメンタリーを劇映画化しました。さらに公式資料によると、ナット・ウルフやアレクサンダー・スカルスガルドなどの俳優陣は軍隊で訓練を受けてから撮影に入るなど、リアリティに徹底的にこだわったとされています。
劇中では、まず兵士達が日々危険にさらされている状況が映し出され、アフガニスタンの現地人に対して警戒心を持ってもおかしくない状況が描かれています。そんな緊張感のある生活の中で、ナット・ウルフが演じる主人公アンドリューが属する部隊に新たに配属されてきたのがディークス(アレクサンダー・スカルスガルド)。彼は一見頼もしい上官で、彼の厳しい態度が部隊の士気を高めていきます。その後、どこから歯車が狂っていったのかがわからないほど、部隊のメンバーはごく自然にディークスのやり方に染まっていきますが、それこそが戦争の恐ろしいところだと実感します。また、この状況に疑問を感じたアンドリューは、彼等の行動を正すかどうかで葛藤しますが、彼自身がこの“キル・チーム=殺人部隊”に命を狙われる可能性すらあり、なぜこんなことで命を二重の危険にさらされなくてはいけないのかやるせなさがこみ上げてきます。これはアフガニスタンで実際に起こった出来事ですが、同じようなことが私達の日常にもあるように思います。ごく普通の人達が、非常な状況のなかで歪んだ正義に目覚めたり、誤った大義名分をかざして自分を正答化する。同調圧力に負けて理性を失う人々の怖さを改めて知らされると同時に、こういった問題に巻き込まれる可能性は誰にでもあることを気付かされる1作です。
ロマンチックな要素は全くなく、デート向きな要素はありません(苦笑)。ただ、状況は違えど職場の上下関係や、学校での上下関係、友達関係に悩んでいる場合、主人公アンドリューに共感できる部分があると思います。何か吐き出したいことがあったり、1人で悩んで辛い状況に陥っている人は、本作を一緒に観た後に、パートナーに相談に乗ってもらうと親身になってくれるかもしれません。
悪いことをする人の勢力が強くて、それに逆らうと自分も危険な目に遭わされる…。キッズやティーンの皆さんの日常にも、同じような人間関係があるのではと思います。本作に登場するディークス達を反面教師として観て、自分がアンドリューの立場だったらどうするのが良いかぜひ考えてみてください。
『キル・チーム』
2021年1月22日より全国公開
PG-12
クロックワークス
公式サイト
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TEXT by Myson