ソル・ギョングとチョン・ドヨンが共演ということで、これは観ないわけにはいきません!結論からいうと、やはり期待通り、期待以上の作品でした。本作は、2014年4月16日に韓国で実際に起きたセウォル号沈没事故について初めて取り上げた作品。この事故では、修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲となりました。物語は、ソル・ギョングが演じるジョンイルがどこからか何年も離れていた家族のもとに戻ってくるところから始まります。彼がどこにいたのかというのは敢えて伏せておきますが、家に戻ると妻は居留守を使って夫を家に入れず、家族が何か問題を抱えていることがわかります。夫婦仲の問題かと思いきや、根本にあるのは深い悲しみで、実は夫婦がセウォル号沈没事故で息子を亡くしたことで、長らく失意から抜け出せていないことがわかってきます。彼らにはまだ幼い娘もいるのですが、この娘がかわいくて健気!兄を慕う妹が発するセリフも、物語の展開でとても重要な役割を果たしていて、子どもながらに兄を亡くした悲しさ、立ち直れない母を見守る優しさと強さ、父が帰ってきたことで子どもらしさを出せた安堵の気持ち、いろいろな感情を映し出していて、心に響きます。『君の誕生日』というタイトルですが、まさにこれは息子の誕生日のことで、本人不在の誕生日をどう過ごすのか、そこに家族の覚悟がどう現れ、彼等は前に進むことができるのかが描かれています。辛い出来事をテーマにしていますが、すごく愛に溢れた作品で、涙腺崩壊必至です。
息子を事故で亡くした夫婦の物語で、夫婦としてどう乗り越えていくのかというところに、カップルに必要な思いやり、距離感が、ヒントとして得られると思います。セウォル号沈没事故については、日本でも報道されていたので記憶にある人もいると思いますが、もし全く知らないとしたら、そういう事故があったということだけ先に知っておいたほうが良さそうです。前半は心が痛くなるシーンが多いですが、最後は清々しい気持ち、優しい気持ちになれます。涙もろい人は、ハンカチ、メイク直し用グッズをお忘れなく!
兄弟姉妹、友達など、子どもの目線からも観られるところがあるので、ぜひ若い皆さんにも観て欲しいです。大切な人がこの世からいなくなるってどういうことなんだろう、亡くなった後はどう過ごせば良いんだろう、その人の話を皆としても良いんだろうか…と、いろいろ悩むと思いますが、大事に思っている人の思いは一緒で、こういう弔い方もあるんだと教えてくれる作品です。家族で観るのも良し、友達と観るのも良しです。
『君の誕生日』
2020年11月27日より全国公開
クロックワークス
公式サイト
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TEXT by Myson