本作はイギリス国王ヘンリー五世にまつわる実話を基にしたストーリーで、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲から着想を得ています。監督は『アニマル・キングダム』のデヴィッド・ミショッド、製作にはPLAN Bが参加していて、プロデューサーにブラッド・ピットが名を連ねているのはもちろん、出演のジョエル・エドガートンも製作、脚本に参加しています(デヴィッド・ミショッド監督と共同脚本)。
物語の舞台は15世紀初頭。ハル王子=ヘンリー五世(ティモシー・シャラメ)は、城を出て町で自堕落な生活を送っていましたが、突如王位を継ぐことになります。そんな折、フランスの皇太子から王位継承の祝いとして、メッセージもなくテニスボールが贈られてきます。周囲の者はこれをヘンリー五世に対する侮辱だとして、王にフランスとの戦争をけしかけますが、ヘンリー五世は戦争による無駄な死を避けるべく、挑発には乗ろうとしません。でも、やがて戦争を避けてはいられない状況になり、本作ではヘンリー五世がどんな経験を経て、真の王になっていくのかが描かれていきます。放蕩息子でありながら、実は王としての資質を持ち、頭がキレるハルは、人間の弱さと強さ、王としての孤独と威厳を見せていきますが、ティモシー・シャラメがそれを見事に演じています。ティモシー・シャラメって、なぜセクシーなんだろうと、いろいろな作品を観てずっと考えていましたが、あの美しく中性的な雰囲気を持ちながら、ここぞという時にすごく“男”を感じさせるからなんじゃないかなと本作を観て思いました。ギャップ萌えってやつですね(笑)。そんな彼の魅力を堪能して頂けると同時に、脇役もジョエル・エドガートン、ロバート・パティンソン、ベン・メンデルソーン、ショーン・ハリス、トム・グリン=カーニー、リリー=ローズ・デップ、トーマシン・マッケンジーと豪華なので、映画ファンには堪りません。そして、本作ではアジャンクールでの戦いがメインに描かれていますが、数では圧倒的に負けているイギリス軍がどうフランス軍に立ち向かうのか、その戦略も見ものです。さらに本作のおもしろさは最後に隠されていて、ゾッとする真実を知ったヘンリー五世が、どんな思いを胸に刻み王としての人生を受け入れるのか、観る側も体感できるストーリーとなっています。
宮廷内ですら誰を信じて良いのかわからない状態で、国を統治しようとするヘンリー五世の物語はとてもドラマチックで見応えがあり、老若男女問わず引き込まれると思います。ラブロマンスの要素はほぼありませんが、国を背負った者同士が何を肝に銘じて結婚するのかを覚悟する姿も描かれていて、状況は全く違えど、結婚しようとするカップルにとっては、我が身に置き換えて想像できるところもあるでしょう。
「え!そこそのまま映すんだ〜」っていうショッキングなシーンもあり、R-15というのも納得です。本作をきっかけに英国史に興味が湧くと、歴史の勉強にも役に立ち、一石二鳥なので、本が好きな人、演劇、戯曲に興味がある人は、ウィリアム・シェイクスピアの「ヘンリー四世」「ヘンリー五世」も合わせて読んでみたり、歴史の本や教科書で史実と照らし合わせてみたりするのはどうでしょうか。
『キング』
2019年11月1日よりNetflixにて配信
R-15+
公式サイト
TEXT by Myson