阪神淡路大震災で大きな被害を受けた神戸で、当時被災者の心のケアを行い、日本においてPTSD研究の先駆者となった精神科医の安克昌(あん かつまさ)氏。本作は在日韓国人として生まれ、若くして亡くなった安医師の遺族関係者への取材をもとに作られたオリジナルストーリーです。物語は彼の子ども時代から始まり、自分達一家が在日韓国人だと知った後、アイデンティティや進路に悩み、やがて精神科医の道を進み、医師として活躍する姿を映し出しています。彼が精神科医の道を進もうとしていた時代、そして阪神淡路大震災が起きた当時は、今よりもっと世間的に精神科のイメージが偏っていて、彼が手を差し伸べようとしても抵抗される時代だったことなどが描かれています。そんななか、丁寧に一歩ずつ人々に歩み寄る姿が印象的で、避難所で起こる被災者同士のもめ事を止める一言には、優しさと思いやりが溢れています。そんな彼の言葉や態度を観ていると、「なるほど!」と思えたり、ス〜っと心が軽くなります。本作は人間の心をテーマにした物語とあって、他にも印象深いセリフが多いのも魅力です。“世の中の役に立つ仕事”というのもキーワードとして印象に残り、彼の葛藤を観ながら、自分自身の仕事を見つめ直すきっかけももらえます。
そして、主演の柄本佑の演技が見事で、精神科医としての優秀さはもちろん、主人公の人間力がリアルに伝わってきます。安医師の優しさに包み込まれるような感覚が味わえる作品なので、今コロナ禍で大変な時だからこそ、多くの人に観て欲しい1作です。
安夫妻の素敵な出会いから支え合う姿まで、カップルとしてお手本にしたいポイントが多々描かれています。人に優しくなれるストーリーなので、ぜひデートで観てください。初デートはもちろん、ベテランカップルや喧嘩中のカップルにもオススメです。
ストーリーもシンプルで誰が観てもわかりやすく、安医師の児童期、青年期も描かれ、精神科医となってから出会う子ども達も登場して、キッズやティーンの皆さんの目線でも等身大で観られる部分があります。人の心を理解する手助けとなるシーンが複数出てくるので、日常で活かせる部分も豊富です。親子で観ても、友達と観ても良いでしょう。
『心の傷を癒すということ≪劇場版≫』
2021年1月29日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト
©映画「心の傷を癒すということ」製作委員会
TEXT by Myson