REVIEW
冒頭から緊張感のあるシーンで始まる本作は、ろくでもない世界でもがく18歳の少年を主人公に描かれています。高校生のヨンギュ(ホン・サビン)は、家庭でも学校でも問題を抱えていて、八方ふさがりになります。そんな時にチゴン(ソン・ジュンギ)に出会い、やむなく地元の犯罪組織に入ります。チゴンはヨンギュに特別なものを感じ、何とか救おうとします。ヨンギュもそんなチゴンを慕うようになります。なぜ、チゴンがヨンギュにそこまでするのかが、物語の行方を大きく左右します。
本作のエッセンスはキム・チャンフン監督自身のどん底生活の経験から生まれたといいます。監督は、シナリオを書いていた当時、生計を立てるためにアルバイトをしていたものの、「生きることが本当に思い通りにいかない時期だった。積極的に行動することで、まったく予想できない結果に陥るような例をいくつも見て、悩むことが多かった。そのような重い考えと観点が脚本に反映された」と述べています(映画公式資料)。心優しいヨンギュが真っ当に生きようとしていたにもかかわらず泥沼状態に陥っていく様子を観ていると、この世の理不尽さが身に染みます。さらにチゴンの背景も見えてくると、まさにろくでもない世界であることを実感させられます。
心理的にも身体的にもかなり辛いシーンが出てきます。助け合える人物がわずかにいる点は少し救いになりますが、それよりも厳しい現実のほうが印象に残ります。なるべく、心が健康な時にご覧ください。
デート向き映画判定
テーマが重く、暴力描写が激しく、かなりリアルなので、デートには向いていないでしょう。ただ、本作はキム・チャンフン監督がオリジナル脚本で作ったデビュー作でありながら、カンヌ国際映画祭に招待されました。そして、チゴン役のソン・ジュンギや、主演のホン・サビン、義理の妹ハヤン役のキム・ヒョンソ(BIBI)による迫真の演技は見応えがあります。ジャンルや内容を問わず、映画を一緒に観ることに慣れているカップルなら本作で映画デートもアリでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定
15歳以上で本作を観られる年齢であっても、ティーンにはだいぶ刺激が強く、衝撃が大きいと思うので、覚悟して観たほうが良いでしょう。家庭にも学校にもどこにも居場所がないと感じることがあったら、余計に共感して、観ていて辛くなりそうです。それでも本作が反面教師となって、逆に踏ん張るきっかけになれば良いなと思います。
『このろくでもない世界で』
2024年7月26日より全国公開
R-15+
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2024年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。