日本の自衛隊が、“自衛隊”と名乗る意味を改めて考えさせられるストーリーで、プロパガンダ要素が多い映画なのかと思いきや、さまざまな立場の人間の視点で描いていて、観る側に判断を委ねる内容になっています。“自衛”とはどこまでの範囲なのか、“自衛”に徹するとどこまでが限界なのか、そして実際に日本が攻撃を受けた時、防衛に直接携わる人々は1人の人間としてどういう態度を取るべきなのか…。さらに報道の在り方も描かれており、英雄的な描写にも受け取れましたが、ここは賛否が分かれそうです。とにかく全体的に本当に難しい問題を扱っているので、安易に共感できるできないとは言えない内容になっています。近隣国が弾道ミサイルを発射したというニュースが最近増えてきただけに、この物語も相当リアルに感じます。そういう意味でも、この映画は私達一般国民に問題意識を提起するきっかけとなりそうです。
デート向きの内容ではないし、議論するにもだいぶハードな内容ですが、社会問題をどう見ているかというところにも、人となりが見えるので、安定した交際を続けてきているカップルなら、たまにはこういう映画を観て語り合っても良いのではないでしょうか。どのキャラクターに感情移入したかという話題にも、お互いの価値観が垣間見えると思います。
本作で起きる問題について、これが絶対に正しいという答えがあるわけではありません。でも、世界情勢が緊迫してきている昨今、考えることを先延ばしにできなくなっており、皆さんの未来にこそ、日本の軍事問題が大きく影響してくると思います。この映画はそんな問題を身近に感じながら考えるきっかけになるので、家族や友達を誘って観て、意見を交換してください。
『空母いぶき』
2019年5月24日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト
©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ
TEXT by Myson