本作は、自身も特別支援を必要とする息子さんをお持ちのヤコブ・ゴールドヴァッサー監督が、約10年前に耳にした実話を基に撮った作品です。核となる部分は公式サイトで公表されていますが、ここでは敢えて伏せておきます。
腎不全を患うルーベンは、数十年前に別れた元妻が亡くなったため、元妻と一緒に暮らしていた知的障害と発達障害を抱える30代半ばの息子ガディを一時的に預かることになります。ガディはご飯の出され方にこだわりがあったり、毎日のルーティンがあったりして、始めのうちルーベンは戸惑いますが、徐々に息子を理解し、父子として失われていた時間を埋めるかのように心を通わせていきます。でもルーベンの体調はだんだん悪化し、経営している小さな車の整備工場も決して順調とは言えません。こんな苦境のなか、父子はどうするのかというところで、ある大きな決断が必要になってくるのですが、ここが実話にもあった部分となります。それはとても難しい問題で、いろいろなことを観る者に投げかけてきます。同時に父の成長、子の成長をそれぞれ描いていて、誰にでも共感できる内容になっています。切なさと優しさが入り混じるストーリーですが、最後は清々しい気持ちになれます。
父子の物語がメインなので、特別ロマンチックなムードになるような展開はあまりありませんが、心温まるストーリーなのでデートで観るのもありでしょう。大きな議論が含まれているので、観終わった後にお互いにどう思うかを話し合うと価値観が見えてくる部分もあると思います。デリケートな部分もあるので、初デートには向かないかも知れませんが、お互いに遠慮なく議論を交わせるカップルならばぜひ観てください。
本作のなかで、ガディを見守る周囲の人々の温かさも印象に残ります。キッズやティーンの皆さんの中には、学校の同級生で支援が必要な友達がいるかもしれませんが、知的障害や発達障害を持つ人達が普段どんな事に苦労しているのかなど、もっとよく知るために本作を観てみて欲しいと思います。親子で一緒に観て、学校の話をするきっかけにするのも良いですね。
『靴ひも』
2020年10月17日より全国順次公開
マジックアワー
公式サイト
© Transfax Film Productions
TEXT by Myson