大倉忠義、成田凌とも役にピッタリとハマっていて、まあ〜何とも艶めかしいお話になっていますが、「この2人がここまでやるの!」というシーンもあり、妥協を許さない行定勲監督のこだわりも感じます。大倉忠義が演じるのは、モテるけれど優柔不断で受け身の大伴恭一。彼は見た目は良くても、中身がないというか自分がなく、自分を好きになる人に合わせてしまう男ですが、「こういう人いるよね〜」という感じでとてもリアル。自分がこの人の彼女だったらと想像しながら観てしまうと、「こういう男が1番厄介!」とイライラしてしまうのですが、成田凌が演じる今ヶ瀬渉の猛プッシュによって、恭一がだんだん本当の愛に目覚めていく様子が見えてくると、「こういう人でも出会うべき人に出会えば、変わるんだな」と微笑ましい目線で観られるようになります(笑)。渉も最初やべえ奴かと見せかけて、めちゃめちゃピュアで乙女チックなキャラクターなので、恋する人なら性別を超えて共感できるはず。結局、男が好き、女が好きという議論を通り越して、「本当に人を愛することができた時、人はどう変われるのか」というお話なので、ボーイズラブとして括るともったいない作品です。劇中では、元カノと渉のバトルも繰り広げられますが、女性目線からすると、渉のような人ほど手強い相手はいないなと思えます。もう覚悟というか、人生をかけてるレベルが違う!そういう点でも、恋愛は何が起こるかわからないというおもしろさを感じさせてくれます。
ラブシーンが多く、中には濃厚なシーンもあるし、優柔不断な恭一はいろいろな人と関係を持つので、デートで観ると気まずい要素は多めです(苦笑)。いろいろなキャラクターを通して、人間の表と裏も描かれているので、ドギマギさせられるシーンも多くあります。そこが本作の魅力でもあるのですが、デートで観るよりは、仲の良い友達と観るか、1人でじっくり観るほうが、堪能できるのではないかと思います。
R-15なので、15歳未満の人はまだ観られません。かといって16歳以上でも、「大倉忠義が観たいから」「成田凌が観たいから」と、内容を知らずにのほほんと観るとそこそこビックリする内容です。ボーイズラブを扱う作品は映画もテレビも本もいろいろ増えたので、そこはそれほど驚くことではないと思いますが、性描写が生々しいので、親と観に行くと相当気まずくなると思います。「親子で関ジャニ∞ファンです」という人でも、くれぐれも親子では観ないようにと思います(苦笑)。
『窮鼠はチーズの夢を見る』
2020年9月11日より全国公開
R-15+
ファントム・フィルム
公式サイト
©水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会
TEXT by Myson