ナ・ホンジン原案、プロデュースのホラー映画くらいの情報で観始めると、「あれ?これってドキュメンタリーなの?」と戸惑うくらい、特に前半はかなりリアルに見えるモキュメンタリーです。物語は、タイの東北部にある村を取材している撮影隊が、1人の祈祷師ニムの日常を追うというもの。ニムの姿を追っていると、姪のミンに異変が表れ、やがて手をつけられない事態に発展していきます。
後半ではミンがどえらい状態になってしまうのですが、クライマックスは好みが分かれそうな気がします。後半のほうがビジュアル的には過激なので、普段ホラーをあまり観ない方にとっては強烈に映ると思います。ただ、ホラー映画を観慣れている立場からすると、私は前半の不可解な状況のほうが怖さがあったように感じました。後半はちょっとやり過ぎな印象もあり、観る方によっては逆に可笑しく思えてしまう部分もあるかもしれません。
でも、最後の最後である人物の本音が明かされて、これこそが本作のおもしろい部分ではないかと思います。形がないもの、証明できないものを信じるとはどういうことなのか、鑑賞後に振り返って考えると、まだまだジワジワと味わえる作品です。ホラー映画という範疇のみに収めずに、哲学的な視点で観るのも良さそうです。
吊り橋効果があるといえばありますが、それを通り越して唖然としてしまうシーンもあります。初デートで観るのは絶対に避けたほうが良さそうだし、誘うとしてもお互いの映画の好みをかなり把握していなければリスキーです。一方で、2人の好みさえ合っていれば鑑賞後の会話は盛り上がりそうです。
タイトルが神秘的なので、それだけで観たくなる方もいると思いますが、R-18作品なので18歳になるまで観られません。心理的な怖さとビジュアル的な怖さの両方があるので、怖がり屋な方はマイルドなホラー映画で免疫を付けてから観るほうが良いかもしれません。
『女神の継承』
2022年7月29日より全国公開
R-18+
シンカ
公式サイト
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TEXT by Myson