REVIEW
予想した通り、タイトルにある“満ち足りた”には皮肉が込められているわけですが、裕福=幸福ではないということを表しているだけで終わらない点が本作の見どころです。
正義よりも勝利、そしてその対価を優先して仕事を請け負う弁護士のジェワン(ソル・ギョング)と、自分の利益よりも人の命を救うことを優先してきた小児科医のジェギュ(チャン・ドンゴン)は兄弟です。性格が正反対ともいえる2人は、ある日自分達の子どもが重大な出来事に関わっているかもしれないと知ります。そして、親としての対応で真っ向から対立。両者の方針が平行線を辿るなか、状況がガラッと変わります。
先々何が起こるのかを知らずに、純粋に彼等の様子を観察していただきたいので、出来事の詳細には触れずにおきます。ある時点までは他人事だった状況が、突如自分達の問題になった時、さらにそれが自分自身ではなく、我が子の問題だった時、人は正常に判断できるのか。本作はそうした状況に陥った人間が取り得る言動を生々しく描いています。
そして、幸福かどうかという以前に、人間としての在り方に物申す内容になっていて、それが子ども自身の問題である点で、観ているこちらもとても複雑な心境になります。物語が展開する度に良からぬ方向へどんどん転がり、クライマックスで頭に浮かぶ嫌な予感は的中する方も多いでしょう。これは絶対に許せないという気持ちのやり場がないという意味での余韻が多く残ると同時に、実際に世の中にはこれに似た状況が多くあるのかもしれません。頭ではわかっていても、実際にそうなった時に正しい判断ができるのか。ぜひシミュレーションしてみてください。
デート向き映画判定
子どもを持つ重みを感じずにはいられない内容です。結婚を視野に入れている相手と観る場合は一緒にシミュレーションできる一方で、将来へのプレッシャーが増す可能性があります。お子さんがいる夫婦で観た場合は、一層自分事として観られるはずです。子どもの問題をいつも一方が担っている場合は、敢えて夫婦で観て、子育てについて話し合うきっかけにしてはどうしょうか。
キッズ&ティーン向き映画判定
皆さんは子ども達の目線で観られると思います。でも、本作に登場する子ども達は反面教師として観てください。どんな人間でありたいと思うかはとても重要なことです。物質的にしか満たされておらず、人を大切にできない人には、本当の意味で仲の良い友達はできません。薄っぺらい上辺だけの人間関係しか残らない人生か、お互いを大事にできる人間関係のなかで生きていくか、自分の価値観を見つめながら観て欲しいです。
『満ち足りた家族』
2025年1月17日より全国公開
PG-12
日活、KDDI
公式サイト
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TEXT by Myson
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