本作は1941年12月7日(日本時間12月8日)に行われた日本軍による真珠湾への奇襲攻撃から、太平洋戦争の形成が逆転したきっかけとなったとされるミッドウェイ海戦までを主に描いています。日米共にあらゆる立場の複数のキャラクターが登場する中で、重点的に描かれているのは、アメリカによる日本の情報傍受が戦争の勝敗を握っていたという点。暗号を解読しつつ、それがガセネタではないか確証を得るために、「そうやって確かめてたんだ!」というような細かなやり取りに驚かされたり、一か八かの選択の大きさに、改めて情報の重要さを実感させられます。私は日本史、世界史に苦手意識があるので、恥ずかしながら戦争映画をたくさん観るわりには全体像を網羅できていませんが、それでも「この出来事があれに繋がって…」と興味が喚起され、背景をもっと知りたくなる内容になっています。なので歴史に詳しい人ならもっと前のめりで観るであろう内容と言えます。
そして、『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』など超大作を多く手掛けてきたローランド・エメリッヒ監督が手掛けた戦争映画ということで、これは大画面で観なければもったいない!2時間18分という長さですが、群像劇という構成、情報戦を扱っている点で、良い意味で注意力が必要な内容であり、エド・スクラインが演じるディック・ベストが見事な空中戦を見せるシーンがアクセントとなっていてメリハリがあり、上映時間はあっという間です。空中戦のシーンはとても臨場感があり、自分が操縦席に乗っているかのようで、首に力が入ります。新型コロナウィルス感染症の問題で映画館に行きづらい状況ではありますが、ぜひ大きなスクリーンで観て頂きたい作品です。
洋画ですが、日本とアメリカの大戦を描いていて、山本五十六を豊川悦司、南雲忠一を國村隼、山口多聞を浅野忠信が演じているので、違和感なく、日本史を外から眺める感覚でも観られます。第二次世界大戦について前後のことや他の国々との関係など背景を知っているほど理解しやすいのは当然ですが、小学校で教わる程度の基本的な情報だけでも、内容にはついていけます。蘊蓄を語られるのが苦手な人は別として、歴史に詳しい相手と観に行くと、解説してもらえるのは嬉しいですよね。
戦争映画はどちらの視点で描かれるかで印象が大きく変わります。でも、それぞれの立場から観ることで学ぶことがたくさんあります。さらに戦争映画は一人ひとりの人間にフォーカスしていることが多く、敵か味方かは関係なく、皆に大事な家族がいること、人と人となら通じ合えるのに、国と国という立場になると戦わされることなど、視点を変えて眺めることで、いかに戦争が愚かなことかにも気付かされるはずです。戦争映画は難しそうなイメージがあるかも知れませんが、これだけ多くの戦争映画が作られることには意味があると思います。ぜひキッズやティーンの皆さんにも本作を含め、いろいろな戦争映画を観て、戦争をせずに平和に暮らせる方法を考えて欲しいと思います。
『ミッドウェイ』
2020年9月11日より全国公開
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
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TEXT by Myson