本作は、イラン系移民2世のファラズ・シャリアットによる自伝的作品で、本作で監督デビューを飾っています。物語は、ドイツの移民系青年パーヴィスを中心とした青春物語が映し出され、移民問題、LGBTQといった繊細なテーマがベースにありつつ、恋愛や友情といった普遍的なテーマも織り交ぜて描かれているので、主人公の心情に自然と感情移入することができます。
パーヴィスはあることをきっかけに難民施設で通訳として働くことになり、そこでイランからやってきた姉弟アモンとバナに出会います。彼らはすぐに親しくなっていきますが、だんだんと置かれている状況の違いを感じるようになります。日本人にとって移民問題はあまり馴染みがありませんが、本作を通してその現状や難しい問題があることを痛感させられます。その一方で、純粋に恋愛や友情を楽しむパーヴィス達の様子がおしゃれなファッションやハイブリッドな音楽に乗せてとても華やかに映し出されていて、その緩急が上手く描かれている点に監督の手腕も感じられます。
また、日本のアニメ『美少女戦士セーラームーン』の格好をした幼い頃の監督の姿や、主人公のパーヴィスがセーラームーンのコスチュームを身につけているシーンなどが登場するので、セーラームーンを知っている人ならより親近感を感じられるのではないでしょうか。さまざまなテーマが盛り込まれている作品ですが、あまり難しく考えずに素直に観て受け止めて欲しいと思います。
パーヴィスの恋愛模様も映し出されており、彼が純粋に人を好きになっていく姿にはどんな人でも共感できると思います。ただし、本作のテーマである移民問題やLGBTQが彼の恋愛にも深く関わっていくので、そんな困難な状況とパーヴィスがどう向き合っていくのかにも注目です。
移民問題やLGBTQといった難しいテーマの作品なので、キッズはせめて中学生くらいになってから観たほうが、物語をより理解して観られると思います。ティーンの場合は、パーヴィス達と同じ目線で観られますが、皆さんの今の状況と彼らの状況の違いに驚く点もあると思います。本作を通して世界にこういった現実があることを知り、もし気になったらご自身でも移民問題について調べてみてください。
『未来は私たちのもの』
<ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021>オープニング作品
2021年11月18日(木)より21日(日)まで開催の<ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021>にて公開
公式サイト
TEXT by Shamy
© Juenglinge Film