不倫の末に妊娠してしまった女性の子どもと、不倫相手の娘が高校で同級生というなさそうでありそうなストーリー。2人のそれぞれの娘は親の不倫を知っていて、最初は各自の親を守ろうと大げんかをします。でも、ある出来事をきっかけに2人の少女の心の距離は急接近。ある意味一番わかり合える同志のように、親の罪と対峙していきます。一番身勝手で情けないのは不倫をした父ですが、妻、不倫相手の女性、それぞれの娘達の葛藤には共感できる部分があります。また、大人の乗り越え方と少女達の乗り越え方は当然ながら全く違っていて、子どものほうがむしろ真正面から困難に立ち向かっていくので清々しく感じます。一方大人の女性は、女としてのプライドや、認めたくない弱さや孤独があって、傷付くのを恐れながら何とか苦難を乗り切ろうとしている姿が印象的です。
一見ドロドロしそうなストーリーでありながら、どこか人の温かさを感じさせる点が本作の魅力。そして、全くタイプの違う家庭に育った2人の少女が、お互いの母親と話す時にこそ、親という存在を俯瞰して見ることにより、親とはどういうものなのか、親子関係とはどういうものなのかを知るシーンも印象深いです。本作は不倫にまつわるストーリーというよりは、不倫がきっかけで家族が再生を試み、それぞれのキャラクターが成長していく物語と言えます。
本作の根幹はドロドロした不倫話ではなく、家族の物語であり、少女達の成長物語であるとはいえ、やはり不倫がキーワードとなっているので、デートで観ると複雑な心境になると思います。でも逆に、薄々浮気に気付いているカップルや夫婦で、まだ許せるかも知れない余地があり、相手にそれとなく警告を出そうとするならアリかも知れません(苦笑)。
主人公が女子高生2人なので、ティーンの皆さんは等身大で観られると思います。ただ親のこんな姿は見たくないと思えるシーンも多々あるので、エンタテインメントとしてもまだ受け入れ難い人は、もう少し大人になってから観てみると、過ちの裏にある人間のいろいろな思いをリアルに想像できて、多少共感できるのではないでしょうか。
『未成年』
2020年6月5日より全国公開
クロックワークス
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TEXT by Myson