シングルマザーのマルレーヌと8歳の娘エリーの関係は親子関係が逆転しているような状況ですが、この状態で長く耐えられるわけもなく、最終的に2人がどんな風に変化していくのか、最初から物語に引き込まれます。再婚相手との結婚式で信じられないような裏切り行為をし、瞬時に関係を破綻させてしまうマルレーヌ。でも、彼女が元々精神的に不安定で生活も貧しいことが、いろいろなところで悪循環を及ぼしている点で、彼女を一方的に非難する気にはなれません。ただ母親がそんな状況になってしまっているため、娘エリーがしっかりしなければいけない状況に追いやられているのも切ないところで、とてももどかしく感じます。最初のうちはエリーの母親に対する包容力の大きさに救われる部分がありますが、とはいえエリーはまだ8歳で、子どもらしく過ごす時間も母親からの愛情も必要な年頃です。そんなエリーをマルレーヌはしっかりした子だと過信していますが、いくらしっかりして見えても、母親に甘えられない、頼れない、孤独な子どもが抱える不安がいかに大きいものなのか、本作を観るとリアルにわかります。母親の愛の形にもいろいろありますが、皆苦しい思いを経て母親になっていくんだなとしみじみさせられるストーリーです。母親という役割の重さを、母親自身の立場、子どもの立場から生々しく描いていて、決して美談としていないところが本作の魅力であると思います。やさぐれていながらも美しさを秘めた母親を演じたマリオン・コティヤール、感情を押し殺したり爆発させたりする難役に挑んだ子役エイリーヌ・アクソイ=エテックスの演技も見応え抜群です。
序盤で少し出てくる男女関係の下りからして、デート向きではありません(苦笑)。ただ、生活に苦しむ母と幼い娘の関係の変化と2人の成長を追っていくストーリーなので、カップルで観て盛り上がるという内容ではありませんが、夫婦で観るなら親としての目線でお互いに考えさせられるポイントがあると思います。
PG-12なので12歳未満の人は保護者と一緒に観てくださいということになりますが、12歳未満でなくても、親子で観て感想を語り合うことで普段言えない思いを明かすチャンスにできそうです。内容としては重いし、正直親子の会話では話題にしづらいテーマが描かれていますが、だからこそ思いをストレートに言わなくても、感想を伝えるだけで、それとなく伝わる部分があると思います。
『マイ・エンジェル』
2019年8月10日より全国順次公開
PG-12
ブロードメディア・スタジオ
公式サイト
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TEXT by Myson