世界中35ヵ国で翻訳され、300万部を越えるベストセラーとなった経済書「21世紀の資本」の著者トマ・ピケティは、アメリカの経済学者サイモン・グズネッツが提唱した、成熟した資本主義経済は平等化するという理論を覆し、過去300年間のデータから、富裕層と貧困層の経済格差の広がりを実証してみせたことで称賛を浴びました。本作はトマ・ピケティ自身が、脚色、監修、出演として制作に参加し同書を映画化、資本主義が生む格差社会について述べています。この本は728ページにも及び、たしかにそれを全部映画に収めて表現するには限界があるので、かいつまんで語っていると思われますが、『ウォール街』『プライドと偏見』『レ・ミゼラブル』『ザ・シンプソンズ』など馴染みのある映画の1シーンを使いながら、なるべくわかりやすく解説しているので、入門的に観るには良さそうです。とはいえ、個人的にはそれでも情報量の多さに圧倒されたので、できれば映画館で一度観て頂いてから、ブルーレイや配信で購入してゆっくり観返してもらうのが良さそうです。
今、日本社会でも格差が広がっており、この映画が劇場公開される2020年3月は、コロナウィルスの影響で経済も混乱に陥る兆しが出てきています。映画の中でも歴史的な出来事が経済に与えた影響を映し出していましたが、その背景では人々の心理的不安も大きく影響しています。でも、ただ不安になっていても解決にならないし、不安が募るだけ。まずはこういった映画から知識を得て、自分達のいる社会の構造、その中の自分達の状況を見直すきっかけにするのもアリではないでしょうか。
集中力、理解力が必要な内容なので、観賞中はスクリーンに釘付けになると思いますが、鑑賞後に解釈をお互いに補えるという意味では誰かと観に行くほうが、観た後にすぐに話し合えるので、デートで観るのもアリだと思います。ただ、好みは分かれるジャンルではあるので、初デートには向かないでしょう。でも、結婚を視野に入れているカップル、夫婦なら、家計について、自分達の仕事についてなど考えるきっかけになるので、お互い興味があるなら、ぜひ観てください。
子どもにはだいぶ難しく感じるのではと思います。中学生、高校生なら、学校で経済の勉強をしていたり、もともと自身で関心があるなら、トライしてみても良さそうです。親が経済に関心があるなら親子で行くほうが、不明なところを後で話し合えるので良いでしょう。大学生はこれから社会に出て、リアルに経済の問題に直面する日も近いので、社会構造を知っておくと、自分の価値観、人生観を考えるきっかけにできるかも知れません。
『21世紀の資本』
2020年3月20日より全国順次公開
アンプラグド
公式サイト
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TEXT by Myson