本作は、認知症の家族にどう向き合うかを、妻、娘、孫の立場で描いており、長い期間におけるそれぞれのキャラクターの変化を綴っています。介護の大変さだけを描いているわけではなく、認知症の家族が問題を起こしてしまった時、他の家族がどう対処していくかに、キャラクターの苦しみや成長が見えて、観る側の現実での立場に関わらず、誰かしらに共感できるストーリーになっています。主人公の家族が、父、妻、娘2人という構成で、妻、娘のそれぞれの物語は、女性が生きていく上でぶつかる問題を扱っており、女性目線で身近に感じられる部分もたくさんあります。家族の温かさ、家族の難しさの両方を描いている点も本作の魅力となっています。
恋愛関係で起きる問題、結婚生活における問題と、思った以上に生々しい内容が描かれているので、自分達とリンクする部分に気付くと、気まずくなる可能性がなきにしもあらずですが、本気で関係を続けていきたいと思うなら、敢えて一緒に観て、感じたことを話し合うと、関係が深まるかも知れません。
認知症と言われても、まだピンとこない人も多いかも知れませんが、本作では孫の存在がとても鍵になっていて、皆さんと同じ世代のキャラクターということもあり、孫の目線で感情移入できると思います。認知症になったおじいちゃんを軸にした物語というよりは、その周りの家族に焦点が当てられているので、皆さんが日常で抱える家族の問題と近いストーリーに感じると思います。そういった意味でも、本作は家族で観るのがオススメです。
『長いお別れ』
2019年5月31日より全国公開
アスミック・エース
公式サイト
©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋