ある殺人事件が起こりますが、犯人捜しをするのがメインのお話ではありません。ギャンブルに溺れ、恋人に甘えて暮らしていた男が、心を入れ替えられるか否かを追うストーリーが軸になっていて、彼とその周囲の人間が殺人事件を経て、再生していく様が描かれています。香取慎吾が演じるキャラクターが本当にどうしようもなく堕落してしまっていて、そこに追い打ちをかけるように辛い出来事が起き、絶望的な状況に陥りますが、大切な人が亡くなったからといって、すぐに心を入れ替えられるわけではないという点が、人生の難しさ、人間が抱える深い闇をリアルに表しています。また、主人公以外にも心が病んでいるキャラクターはたくさんいて、悪人か善人かは、単純に分けられないし、1人の人間の中に善悪が両方あることを実感します。
タレントとしては快活なイメージの香取慎吾が、こういった役柄を演じているのも新鮮で、年を重ねて独特な味が出てきているのも見どころ。俳優としてのチャレンジ精神も伝わってきます。
主人公のカップルを見ていると、複雑な心境になる部分が多々あり、デートで観て盛り上がる内容とは言えません。主人公と同じような状況で苦労している場合は、反面教師として観られる可能性もありますが、立ち直るまでにだいぶ時間がかかるので、こうなっても「仕方がない」という例とされたら、相手は辛いですよね。なので、1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観るほうが楽しめると思います。
PG-12なので12歳未満の人は保護者同伴なら観られますが、内容が大人向けなので、せめて中学生以上になってから観るほうが、それぞれのキャラクターの心情をリアルに想像しながら観られると思います。心は優しいのに、良くないことをしてしまう人間も何人か出てくるので、今後の人間関係の参考になる部分があるでしょう。
『凪待ち』
2019年6月28日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ
公式サイト
© 2018「凪待ち」FILM PARTNERS
TEXT by Myson