原作はオーストリアの作家でユダヤ人のシュテファン・ツヴァイクが1942年に自殺する直前に書いたとされる「チェスの話」です。主人公のヨーゼフ・バルトーク(オリヴァー・マスッチ)は、貴族から莫大な資産を預かっていました。オーストリアを併合したナチスドイツは、その資産を横取りしようと、ヨーゼフを逮捕し、預金番号を聞き出そうとします。しかし、ヨーゼフはそれに抵抗し、軟禁されてしまいます。軟禁された部屋では読書も一切許されず、時間の感覚を奪われていきます。
そんな折、ヨーゼフはかすかな希望を見つけます。
映画公式サイトのあらすじにはもう少し具体的な内容が書かれてありますが、何も知らずに観るほうが数倍驚きがあり楽しめるはずなのでここでは伏せておきます。本作は、2つの軸で物語が進行していて、やや混乱するかもしれません。ただ、最後に一気に伏線が回収されるので耐えましょう。タイトルの意味も含め、さまざまな意味で「そういうことだったのか!」と驚きがあるでしょう。
ヨーゼフを演じたオリヴァー・マスッチの役作りと演技が見事です。逮捕される前と後で、別人かと思うほど顔つきとオーラが違います。彼のリアルな演技があってこそ、この物語に説得力が出ています。何もかも奪われたヨーゼフがどう戦ったのか予想しながらご覧ください。
ロマンチックなシーンもありながら、ベースはシリアスなので、ウキウキした気分で過ごしたい日のデートや、お互いの好みがまだわかっていない初デートには向かないでしょう。ただ、見応えがあり、観賞後にどれだけ伏線に気付けたか話し合うのが好きなカップルにはオススメです。何度か映画デートをしているカップルは、2人とも興味があれば一緒に観てみてはどうでしょうか。
集中力と理解力がある程度必要なので、対象は中学生以上かなと思います。一見何も起きていないようでいて、さまざまな伏線が張り巡らされています。最後に伏線が回収されるおもしろさを味わってください。また、何を持って勝利とするのかなど、物事の捉え方についても視野を広げてもらえると思います。
『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』
2023年7月21日より全国順次公開
キノフィルムズ
公式サイト
© 2021 WALKER+WORM FILM, DOR FILM, STUDIOCANAL FILM, ARD DEGETO, BAYERISCHER RUNDFUNK
TEXT by Myson
本ページの情報は2023年7月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。